散歩から帰った私に

ユーチューブを見ていた息子が言った。


「オレが電話する前にさっき先生から

電話かかってきた」


「え、それで何て?」


「昨日の血液検査で白血球の数値が

おかしいから大きな病院に行ってって」

「紹介状書くから、て言ってた」


「それは今日行くってこと?

それとも紹介状もらってから

週明けに行くってこと?」


「いや、いつとは言ってない」


そんなわけないでしょう、

大事なことなんだから絶対言ってたはずよ、

と問いただしても

いつ行けとは言ってない、と

息子の話はまったく要領を得ない。


いつもこうだ。

息子には話の要点をおさえて正確に

伝達する能力が欠落している。

幼稚園児と一緒だ。

いや、幼稚園児だったほうがまだましだ。

幼稚園児なら自分で電話を取ることはないからだ。

私はイライラしてくるのをこらえて

ちょっと聞き方を変えたりしてみた。


「なんか救急で親御さんと一緒に、

て言ってた」


救急。親と一緒に。


「それは今日、それも今すぐってことよ!」


ほら、準備して、と促しても

救急、てそんな意味とは知らんかった、と

アホ丸出しのことを言っている。

さらに

「検査入院になるかもしれん、て言ってたな」

大事なことがぼろぼろ出てくる。


私はとにかく気が急いて

さ、行くわよ、と息子に先だって玄関を出た。

その先生が言う大きな病院とは

家から自転車で10分のところだ。

私は無意識に自転車のハンドルに

かけた手をふと止めた。


「あなた自転車で行っていいの?」


息子も自分のリュックを

自転車のかごに入れながら


「そう言えば親御さんと車か

タクシーで、とか言ってたわ」


おい。いい加減にしてくれ。