そう。

息子はいつでも私を守ってくれたり

喜ばせてくれたり助けてくれたりする

とても母親思いな子だ。


父親にウソの体温をLINEしたのも

父親を心配させたくないから

というより

本当の体温を連絡して

それほどの高熱なのに息子を医者に

行かせなかった私が

主人から非難されるのを防ぐためだった。


しかし

今思い返してみると

毎晩の寝汗や発熱に耐えていたときの

息子はなんかいつもとちょっと違うな、

と感じることを言うことがよくあった。


大学の課題をやるとき

「そばにいて」

と言ったことや

「朝起きたとき、いつもママが

いないから寂しいねん」

と言ったこともあった。


これは

毎朝日課の犬の散歩から帰ってきた私に

たいして言った言葉だ。

寝汗にさいなまれる前の息子は

昼過ぎまで寝ているのがふつうだったので

息子が起きてきたときには

たいてい私が家にいたのだ。


ママがいなく寂しい、と言う息子に

あれ?と違和を感じながらも

そのときは

ママがいなかったらご飯を作って

もらえないから困るんでしょ、と

違和感を打ち消すように

咄嗟にごまかしてしまった。


あるときは

さっき昔の家族のビデオを見たんやけど、と

普段その存在すら忘れられているような

10年ほど前の家族を撮影したビデオを

見たと言ってきたことがあった。


そして息子は

「それ見て思ったんやけど、ママは

昔より今のほうが魅力的やわ」

などと言う。

本来なら無条件にうれしいはずの

その言葉を聞いて

私は無性に悲しくなってしまった。


言葉の内容自体はうれしいのだけど

なんだか最近

いつもの息子じゃないみたいな

ことばかり言って

そんな特別な贈り物のような

言葉を残して私のもとから

去っていかないでよね、と不安がよぎった。


元気なときは

ママを守る、助ける、という態度

だった息子が急に甘えるようなことを

言ったのは病気に侵されて

体力、気力的に限界にきていたのだろう。


そして私も心の奥深くでは

それをわかっていたのだと思う。