体の不調にたいして

私は薬があまり好きではないので

よほどでないかぎり医者には行かない。

医者に行くと大抵の場合

薬を処方されるからだ。


バカだと思われるかもしれないが

インフルエンザもコロナも

栄養をとってひたすら寝て治してきた。


主人は

私よりはまともな感覚の持ち主なので

ふつうに医者に行く。


異常な寝汗と発熱が

なかなかおさまらない息子を心配して

ある朝主人が

医者に行かせるように、と

私に言いおいて会社に行った。


私も

そろそろ治ってくれないと

布団にカビかキノコがはえてくるわ、

なんて思いながら

受診させたほうがよいと思った。


起きてきた息子に

「父がお医者さんに行くように、て

言ったはったよ」

と言うと

「あー今日はムリ。

大学の課題の締切りで時間がない」。


勉強がまったく好きではない息子は

遊び最優先で

課題の提出期限の長さにかかわらず

早めにやるということはなく

いつもギリギリ、お尻に火がついてから、

いや火だるまになってからしかやらない。


このときもしかりで

「あーなんでこんなときに

風邪なんかひいたんや」

「しんどくて頭が働かへん」

と言いながら

四苦八苦して課題に取り組んでいた。


「なぁママ一緒に手伝ってー」


「いやいやママなんて頭サビついてて

勉強のことわかるわけない」


「それでもいいからそばにいて」


かわいいこと言うな、などと思いつつ

少しでも課題の役に立ったらと

私はサビついた脳みそをひっかき回して

助けになるようなことをひねり出した。


苦労の甲斐あって

無事に課題が提出できた。

夜になっていた。


「ママが手伝ってくれたからできた」


「ママなんてほとんど何もしてないよ」


「いや、オレ一人ではできんかった」


いったい何の会話やねん、と思うような

やりとりをして


課題が終わったんだから明日は

お医者さんに行きなさいよ、

絶対熱を聞かれるから今はかってみたら、

と息子に体温計を渡した。


ピピピ、と告げる体温計を見て

息子が言った。


「この体温計バグってるW」


42°

「な、おかしいやろ?」


その体温計はつぶれてないはずやけど、、、

ママもはかってみる、と自分も検温した。

36.3°だ。

体温計はつぶれてない。


「えぇー、こんな熱高いわりには

しんどくないけどなー」といぶかる息子。


わー、こんなに熱あるのに

お医者さん行かへんかった、て言ったら

ママ、父に怒られるわ、と

この期に及んで自分の保身かい、と

突っ込みたくなるようなことを私は

言ってしまった。


息子は

「そうやな。

オレ、ママが責められるのは嫌や」


「父には37.8°やった、て言っておこう」


そう言って息子は

ウソの体温を父親にLINEした。