さあて、さて。開店前のお支度がととのった、きのう夕方。おはよー。ハト時計の正確さでママさんがご出勤。もっとも、うちのママは絶対ハトには見えない。どっちかと言うと、えーと。あ、そうだ。そんなことよりアレを報告しなくっちゃ。
「きょう、ご様子見てきました」
えっ?とママはユウコを見る。(台本のト書きか! セルフツッコミ)
「Y社長さんね。どうしてらした」
「いたってお元気ピンピン。女性スタッフがひとり3月末で退職なさるそうで」
その人の夫は大手の会社員でもうすぐ関東へご転勤。
「社長がわたしに嘆願なさるんです。良ければ当社で働いてくださいませんか。事務職で」
はっと身を引くママ(ふたたびト書き)
「そういう事だったのね。貴女としたかったお話」
Y社長はご存じなんです。わたしが秘書検定3級の有資格者であることを。前に合格祝いをくださった。
「それで、ユウコちゃんはなんと?」
なんとビックリ平城京!とシャレたかったけど、そうは言わず、
「棒みたいにぼう然としてました。見かねた社長は、先月ママが来てくれて。ユウコさんのことお聞きしました。いま誰かと付き合ってますかって」
わたしは煮たハマグリみたいに口をあんぐり。
「あ、誤解しないで、ユウコさん。転勤族と結婚すると、いつか帯同しちゃうんで」
わたしの齢も聞いたでしょ。そこんとこはツッコまず、
「すごーく、ありがたいお申し出なんですけど…。今回は、パスさせてください」
とても悲しそうに言いました。ステージで卒業を発表するNMBの子みたいに。そしたら、
「だ、大丈夫です。ムリなお願いをして済みません。ボ、ボクは気長に待ってます。ですって」
「良かった。貴女が辞めたら、お店の回転率が下がるわ」
わたしはローカルテレビの女子アナか。
以上でーす。