帰ってきて、由紀は着替えることもせずに、ベッドにダイブした。
そしてケイタイを見る。
早く電話来ないかな。
待ち遠しい電話はなかなかかかってこない。
とは言っても、まだ別れてからそんなに経ってない。
由紀の家の近くの公園で会ったため、まだ直樹は家にすらついてないだろう。
由紀は欠伸をして、大きく伸びる。
もうすぐあと一時間。それで、由紀の誕生日は終わる。
誕生日。それは一年に一回しかない特別な日。けれど、他人から見たらただの平凡な一日。
一年の中には、ゴールデンウィークやクリスマスや正月。光り輝く行事が並ぶ。
その中で自分の誕生日はどれくらいの位置づけになるのだろう。
当然、他人にはなんてことない日。それでいい。
でも、直樹には今後はクリスマスや正月よりも、大きな日。そう思ってほしい。
来年は誕生日を覚えていてもらって、一緒に祝ってほしい。今年、ほとんど会えなかった分、来年は・・・。
(来年・・・か)
来年の2人は今も変わらずに、こうして関係を続けていられているのだろうか。
人の心は移ろう。どこにも保証はない。
不安になる。けれども、絶対に口には出せない。
ずっと先の話をすれば、重い女って思われそうで・・・。
不安という名の闇は消えることを知らない。
付き合っていく限り、永遠に由紀の中にい続ける。
どんなに苦しくて、つらくてもそれに向き合わなくてはいけない。恋や愛は傷ついたり、苦しんだり。そういうものなのだから。
感情は邪魔だ。それがなかったらどれだけ、楽に生活をできるだろう。と思う。
だけど、逆に感情がなかったらその人生は楽な半面、つまらないものになるだろう。
そう考えるとあるべきものなのだけれど、辛い時とか苦しい時とかは特に考えてしまう。
感情の消去を。
努めて冷静に、何も考えずに無心になって。
それでも、一瞬の隙に感情の欠片が入り込んできて。壊れそうになる時がある。
恋愛に対しても、他のことに対しても。
繊細で脆い自分の心は簡単に崩れる。
玲奈みたいな強い心を持ってる人が羨ましい。
由紀は玲奈と違って、振られても笑って次に進めるなんてことはない。
どれほど引きずるだろう。どれほど泣くだろう。
どれほど彼の顔を思い浮かべるだろう。
少しでも、長くいられたら・・・。
そんなことを考える自分に疑問を投げかける。
恋の延命にどんな意味があるの?って。
いつかはどちらにせよ、別れが訪れる。苦しむ時が来る。
それを先延ばしにしてるだけ。
そんな、ひねくれたもう1人の自分に諭す。
恋愛はきっと、今を笑顔にするものであって先のことなんて考えない、無責任なもの。でも、それが正解。
一見それは悪に聞こえるけど、今が笑顔でなければ、その先の幸せなんて見えないのだから。
自分の中で答えがまとまり、感情が落ち着いてきた時、電話が鳴った。
「もしもし」
彼の声が聞こえた。
「ほんとにごめんな」
続けて彼は言う。
「知らなかったんだし、大丈夫だよ」
その後に、数回のやり取りを終えた後に、由紀は切り出した。
「私のこと呼んで?」
今、自分が笑顔になれるための一番大きなもの。
「えー・・・」
渋る彼に「お願い」由紀は見えない相手に手を合わせた。
そして待ちわびた言葉が耳に届く。
『由紀』
17歳の由紀。27歳の由紀。
同時に届いて、2人の胸を熱くさせた。
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名前を呼ぶまでに28話かかりましたね。
つか、これで終わりでいいんじゃないの?って感じの切れ方ですw
でも、まだ終わりません。
ん~・・・長編になりそうな予感がしますw
次回は日曜日の7時です。