「直樹・・・くん?」
そんなことありえるはずがない。
直樹はもう死んだ。この世にはいないはずの人間だ。
「そうだけど。で・・・どうしたの?」
直樹は由紀に問う。
なにが、どうしたの?なんだろうか。
電話越しの彼が自分に聞いていることがなに一つ分からない。
由紀は、頭の中を一度リセットして、考えてみる。
そこに、常識とか先入観になる物はすべてなくして。
電話の相手は、直樹だと言っている。これは質の悪いいたずらの可能性が高い。
けれど、それをして何のメリットがある?
悪戯そのものに、する方がメリットを求めているかどうか定かではないが、これは無意味すぎる。
じゃあ、なにか?
これが本物の直樹だとでも?
それもまたずいぶんめちゃくちゃな話だ。
はたして、電話の向こうで何が起きているのだろうか。
その時、ふと雨の中通り抜ける車の水しぶきの音が由紀の耳に届く。
・・・雨?
由紀は反射的に壁にかかっている時計を見た。
13時40分。
そして、今日はあの日からちょうど・・・。
あり得ない。そうは思うけど、他に考えられないかった。
「なお・・・じゃなくて、佐藤君、今風邪ひいてる?」
「え?あ、うん」
「それ、私のせいだよね?」
確かめるための・・・術。
「山口さんのせい?そんなことないよ。昨日は久しぶりの雨で寒かったから・・・」
「傘・・・なかったんだよね?」
傘を貸してくれた直樹。彼は二本持っているからといっていたが、実際は一本しか持っていなかったんだ。
「・・・あったよ。もう一本」
彼は少し間を開けた後にそう言った。
(やっぱりだ。あの時と同じ)
10年前の今日、この時間。
由紀と直樹がした初めての電話。まさしくそれだった。
由紀は10年前と同じように言葉を紡ぐ。すると、直樹も同じように返してきて。
まるで、あの時をもう一度繰り返しているようだった。
そして、その電話は終わりの時を迎える。
「わかった」
由紀がそう返事をした後に、じゃあ、また。
直樹は電話を切ろうとする。
相手が本物の直樹だと疑念を持ってから、10年前をトレースして言葉を紡いだ由紀だったが、ここで過去とは違う言葉を口にする。
「ちょっと待って」
「ん?」
「最後に一つだけ、答えてほしいんだけど・・・」
ドクン・・・ドクン・・・。
胸の鼓動が高鳴る。
「なに?」
「今って、西暦何年?」
「1992年。何を今さら・・・」
1992年。それはちょうど10年前。
「何月何日?」
「なにそれ?なんかのクイズ?」
奇妙な問いに、怪訝そうに直樹は聞く。
「そうじゃないけど・・・」
お願い、答えて・・・。
「6月18日だよ」
彼は不思議そうに答えた。
この瞬間・・・由紀の疑念は確信に変わった。
↑ ↑ ↑
押してください~!!
励みになるので
おはようございます。
こういう回って書くの苦手んなんですよ。物語発展する瞬間?みたいな回ww
違和感なく読んでいただけてたらいいなと思いつつ・・・。
明日は日常ブログです!