10話 今でもまだ | love storys  ~17歳、私と君と。~

love storys  ~17歳、私と君と。~

どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

冷蔵庫の中身と睨めっこをしながら『今』の由紀は悩んでいた。


「今日の晩御飯どうしようかな・・・」


冷蔵庫の中にはこれといって、メインになれそうな食材がない。


けど・・・。


由紀は窓から外を見る。


(雨だしなぁ・・・)


車があるとはいえ、雨の中、外に出るのは嫌なものだ。


少し考えた結果、由紀は買い物に行くことにした。




フロントガラスが濡れていた。由紀はワイパーで水滴をはじき、車を発進させる。


常に動くワイパーは視界に入って邪魔だ。


透明で、見えないワイパーとか販売されないかな。そんなバカげたことを思う。


車を建物から一番近いところに駐車して、素早く車を降り、走って建物の中に入る。


少し濡れたな。水滴のついた白いワンピースは少しだけ不格好に見えた。


平日の昼間、さらに雨模様とあって、スーパーの中にはあまり人はいなかった。


今日は何にしようかな。


値段と物と。二つがマッチした物を由紀は探す。


そして、とりあえず、めぼしい安いものを物色した結果、今日の献立はカレーに決定した。


カレーの材料となる食材を買い物かごに入れて、レジへ向かう。


その時だった。


「由紀」


親しげに、けれど意外そうに由紀の名前を呼ぶ声が聞こえた。


誰だろう?由紀は疑問を抱きながら後ろを振り返る。


「あ、玲奈・・・」


そこには、高校時代の親友がいた。


「久しぶりだね。買い物?」


「うん。玲奈も?」


「そうだよ。それにしても偶然だね。久しぶりに会ったし、少し話さない?」


断る理由はなかった。


人付き合いというものはもともと好きな方ではなかったが、相手は親友。


それに、最近会ってないだけに、彼女の近況が気になる。


「うん」


由紀は二つ返事で彼女の問いに頷いた。




2人とも、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れなくてはならない物を持っていたわけではなかったので、買い物袋を車の中において、近場のカフェに入った。


「結婚生活は順調?」


少し茶髪の入ったイケメンの店員がそっと、2人の前にグラスを置いた。


目の前に置かれたアイスティーをストローで一口、喉に通した後に、由紀は口を開く。


「普通かなー」


何も変わらず、特別な刺激もない。そこから出てくる答えは普通。


それ以外の何物でもない。


「普通って・・・楽しくはないの?」


「そうだね。ずっと同じ環境だからね」


「由紀はそれを望んでたんじゃん」


相変わらず、玲奈は痛いところをついてくる。


「まぁ、そうなんだけどさ。玲奈はどうなの?」


「私?私は楽しいよ。意外に。結婚してなくても、彼氏がいれば問題ないのかなって思った」


「子供は欲しいとは思わない?」


「そうだな~。いた方がいとは思うけど・・・とりあえず、20代までは自分の幸せがメインで。色んな男と恋をして、刺激を得られてるのが今は一番いいからね」


「いいな~。私もそういう人生が良かったな」


半分本気で半分嘘。そうなりたいという願望があるけど、じゃあそうすれば?と言われたらできない。


その程度の軽い言葉。


「な~に言ってんの。由紀はかなりいい相手がいるじゃん。私だってあそこまでの相手だったら一本に絞ってるわよ」


由紀を睨むその目は、少し大げさで、冗談交じりのもの。


「ほんとに~?」


「多分。わかんないけどね。実際にそんな相手いないし。由紀はさ、今の生活に不満があるの?」


「なんで?」


「なんとなくね。浩平さんのこと嫌い?」


「そんなことないよ。好きだよ」


でも・・・。


まだ私は・・・。


「まだ引きずってるの?」


玲奈は心の中を見抜くように、由紀が考えている『続き』を言い当てた。


「うん」


由紀は寂しげに頷いて、テーブルに視線を落とし、グラスに入った氷をストローでカラカラと廻した。


「そっか。でも、何も変わらないんだよ?」


いくら想い続けたって。そう続けた玲奈の言葉が棘のように胸に刺さる。


「うん・・・」


「だったら、忘れた方が得。その方が今より、絶対にいい人生送れるって」


玲奈の言うことはもっともだ。反論のしようがない。


けれど、これは気持ちの問題。恋心や相手を思う気持ちなど、感情の変化は自分ではコントロールできない。


いくら好きな人を嫌いになりたいって願ったところで、何も変わらない。


好きな気持ちは続いていく。


逆に、好きでいよう。運命の相手だ。などと思っていても、冷めてしまう時が来ることもある。


そんな人間の不器用な心は些細なもので変化を見せる。


小さな優しさであったり、小さな冷たさであったり。


好きになった気持ちにせよ、冷めた気持ちにせよ、それを知ってからは、その気持ちがどんどん増幅していく。


あの時の由紀がまさにそれ。


好きという感情に気づいてから、由紀はどれほど、直樹を見てきたか。


その由紀の感情は今なお残る。


だから、玲奈の言うことがいくら正しくても、いくら受け入れようとしても、感情は言うことを聞かないんだ。


「うん。そろそろ行かない?さすがに冷蔵庫の中の物腐っちゃうから」


由紀は曖昧に頷いた後に、立ち上がった。玲奈は由紀を見上げて、ため息をつく。


「頑張りなさいよ?」


玲奈は伝票を持ってレジへ向かう。その頑張れは気持ちの整理をつけろってこと。


「あ、私、いくらだっけ?」


「いいよ、頑張らなくちゃいけない由紀におごってあげるよ」


そう言って、笑みを浮かべる玲奈。


ほんとなら、励ます方は逆なはずなのにな。


結婚している由紀と結婚をしていない玲奈。


子供がいる由紀に、いない玲奈。


どちらが女性として、先に進んでいるかは一目瞭然なのだが・・・。


(頑張れ・・・か)


この世にいない人は、どんどん自分の中で美化されていく。


その人との過去の思い出などはすべていいものばかりが頭に浮かぶから。


対照的に、今一緒にいる人はいい面が見えると同時に、どうしても悪い面が見えてしまう。


そうすると、その二人を比べた時に、どちらがいいかと言われれば記憶の中の人。


人の思い出や記憶は曖昧なもの。


すべてが正しいわけじゃない。だからやっかいなんだ。


いつまで経っても、直樹は消えない。


それどころか、どんどん濃くなって、光り輝いていくんだ。



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素直になることは難しい。


けれど、素直になれれば、相手も安心するし、自分の思いも伝わる。


それでも・・・素直になるのは難しい。



今日は少し長かったです。


どうでしたでしょうか?


明後日の金曜日は、11話です。