6月17日。由紀はいつも通り、電車に乗って、学校の最寄り駅まで向かった。
高校二年生になって、電車で学校に向かうということに違和感がなくなり、苦痛でもなくなった。
一年生のころはまだ、満員になって窮屈な電車の中は嫌いだった。自転車で通える高校選べばよかった。
そんなことを通学中毎日考えていたのだけれど。
電車を乗り継ぎ、最寄駅に到着して、由紀は空を見上げた。
一面は雲に覆われていて、太陽の光は全く見えなかった。
・・・雨降りそうだな。
その日は天気予報で午後から雨となっていたのだが、目覚まし時計がなぜか作動することなく、起きるのが時間ぎりぎりになっていた。
そして、急いで準備していたら、傘を忘れるという結果になっていた。
降るなよ~。そう空を睨みつけながら念じて、歩き出す。
辺りは田んぼだらけで、歩き慣れた通学路には、同じ制服を着た学生しかいない。
入学当初は、駅から学校までで迷うかもしれない。そんな不安があったのだが、なんてことはない。
前の人についていけばいいだけだった。
もっとも、そんな複雑な道でもないので、一週間もすれば、前の人など見ずとも、行けるようになるのだが。
教室に入ると同時に、玲奈に話しかけられた。
「今日の体育、テストらしいよー」
玲奈は、由紀の数少ない親友で、頭の切れる、しっかりした女の子。それでもって、ちゃんと冗談にも付き合ってくれる、一緒にいて楽しい相手だ。
玲奈が由紀のもとへ駆け寄ってくるとき、微かにプリーツスカートが揺れた。
「そうなんだ」
今、体育は持久走をやっている。いつもは手を抜いて走ってるからいいが、テストとなるとそうはいかない。
嫌だなぁ。由紀がそう続けると、サボっちゃう?小悪魔っぽい笑みを浮かべて玲奈は答えた。
「さすがにテストサボると、成績やばくなるからだめじゃない?」
「まーね。でも、持久走ってだるい」
玲奈はいつも、そんなことを言うが、結局はきちんとこなす。
ただ、愚痴が多いだけ。
「それは同感だけどね」
由紀は、そう言いながら席に座って、カバンから教科書を出す。
「そういえば、由紀は彼氏できた?」
ガタン。唐突すぎる話に手に持っていた教科書を床に落とす。
「いきなり何?」
「なんとなくね。由紀といつになったら恋バナできるのかなって思ってさ」
「お生憎様。当分、無理かな」
「なんでー?」
「好きな人とかできそうにないから」
うちの学校は共学で、男子がいないわけじゃない。むしろ、半分は男子だ。
けれど、中学まで色恋沙汰が一切なかった由紀には、そういうものがないのが普通になっていて、クラスにいる男子や他の男子に、そういう感情を抱くことがなかった。
高校に入り、告白されたことはある。けれども、毎回答えは決まっていた。
それが、どんなにカッコいい相手であっても、優しい相手であっても。
「玲奈は?」
「最近別れたばっかだよ。草食系過ぎたんだよね」
窓が開いているのか、生温かい風が教室の中に入ってきて、玲奈の茶色の髪を揺らした。
綺麗な茶色ではあるが、それは当然先生の目にも止まるものでもあった。
「草食がいいとかいってなかった?」
前に付き合っていた彼氏は肉食過ぎて、すぐに最後まで求めてきたから嫌だった。玲奈がそう言っていたのを覚えている。
「ん~・・・。そうなんだけどさ。付き合って、1ヶ月経って、手も繋がないんだよ?さすがにないかなーって」
玲奈は大袈裟にため息をついた。
「別に、いいんじゃない?ペースは人それぞれだし」
「えー。でも・・・」
玲奈が反論の言葉を口にしようとした時に、ホームルーム開始を知らせるチャイムが鳴る。
「まあ、いいや。まあ、あとで」
玲奈は由紀に手を振って、自分の席に戻っていく。
(恋愛かぁ・・・)
玲奈みたいに、好きでもない相手と付き合えるほど自分はきっと器用ではない。
そんな自分に、相応しい、好きと思える相手ができるのだろうか。
なにか・・・。このまま高校生活が終わっていくような、そんな気がした。
けれども、それは間違いで、今日、この日に由紀は10年たっても忘れられない相手と深く、大きな出会いをしたのだった。
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3話は過去です。
けっこう過去メインで動いていくので、専業主婦どうのではないかもですw
まだ、これから。序盤ですが、これからもよろしくお願いします。
次回はインターバルです。
明日の更新になります。
最近の出来事についてと、今後の小説の展開についてなど・・・。
では、また明日。時間は・・・午前中です。w