「何か飲む?」
綾音は麻衣に聞いた。
「ん~・・・なんでもいいよ」
麻衣は部屋に着くなり、自分の家であるかのように何のためらいもなくベッドに腰掛けた。
綾音はグラスにオレンジジュースを注いで麻衣に手渡す。
「ありがとー」
麻衣はそれを一口だけ飲んで、テーブルの上にグラスを置いた。
「今日は異様に疲れたね」
「確かにね。私もできれば参加したくなかったよ」
ほとんど強制参加だったからなー。麻衣は苦笑しながらそう続けた。
今日は音楽鑑賞会というものが行われた。そこでは、ウィーン合唱団やら、芸術性あふれるピアニストやら、凡人には理解しがたいレベルでの演奏や歌声が披露された。
綾音はそういった音楽に興味がなく、全くの未知の世界にただただ眠くなるだけで、苦痛な時間にしか思えなかった。
しかし、今日のこのイベントは通常の出席日数に換算されるということで、行くしかなかったのだ。
欠席が重なると、当然大学側からの心証も悪くなるし。
「ねぇ、たまには人生ゲームしようよ」
麻衣が言った。
「え?なんで?」
唐突な話題の変化に綾音は少し戸惑う。
「なんとなく。気分転換だよ」
「いいけど・・・」
綾音はテレビの下の収納スペースからゲーム機を取り出して、準備を整える。
「負けたほう、どうする?」
麻衣は小悪魔のような笑みを浮かべて綾音に問う。
「どうって・・・。罰ゲームありなの?」
「もちろん」
「じゃあ、ジュースおごりで」
あまり、大きくない罰を綾音は選ぶ。
人生ゲームは運でほとんど決まる。そんな勝負で大きなものなど選べるはずもない。
ひたすらルーレット回すだけだし。
「おっけ。罰ゲームがあると、負ける気しないんだよね」
「人生ゲームって実力関係ないけど?」
「あるから。よっしゃ、勝負だ」
キャラクターを決めて、まず最初に綾音がルーレットを回す。
ゲーム機でやると、手動でやらなくて良いので楽だ。
3が出て、ハートのマスに止まった。
「いきなり恋愛か。誰にするの?」
選ぶ相手は8人。綾音はいつも同じ相手を選んでいた。
「決まってるじゃん」
それは今回も変わらない。
「そういえば、綾音さ。現実の方の恋愛はどうなの?」
ふと思い出したかのように麻衣は綾音に聞いた。
「ああ・・・。最近・・・会ったんだ」
「え・・・?」
「・・・何も言わなかったんだ?」
麻衣はため息をつきながら、何してるんだか、そう続ける。
「せっかくのチャンスだったのに。こんな奇跡、多分二度と訪れないよ?」
もう一度会えたら。そんな淡い期待を抱いている綾音の考えを麻衣は否定するかのようだった。
「でも・・・そんな簡単に言えることじゃないじゃん」
「そうだけどさ。ただ、言わないといけなかったと思うよ。今回は」
麻衣はグラスに入っていたオレンジジュースを飲みほす。
「まあ・・・ね」
綾音は座イスに寄り掛かり、天井を仰ぐ。
「他の人とかは考えないの?」
「無理かな。会ってさ、再確認したんだよ。悠太君が好きなんだって」
「なんか、人生ゲームと同じだね。綾音は人生ゲームでも毎回同じ人選んでるし。その人って決めたら変えられない。不器用だね」
「悪かったね」
「でも、それが綾音のいいところなんじゃないの?1人の人を思い続けるって素敵なことじゃん。すぐに新しい人を探すよりよっぽどさ」
「まあ・・・ね」
でも・・・。不器用だときっと、一つ一つの恋が重くなって辛くなって・・・いいことなんてないように思えるんだ。
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