受験も悠太への想いも、すべてを消し去りたい。そんなことを思う。
けれども、その二つは依然として頭に残り続ける。
嫌になる。考えることそのものが。
「随分と暗いんだな」
学校からの帰り道、ふと後ろから声をかけられた。
聞き覚えのある声。だけど、声だけで誰かは分からなかった。
綾音は後ろを振り返って、相手の顔を見る。
「あ、久しぶり」
そこにいたのは淳一だった。
淳一は隣の家に住んでいる幼馴染だった。歳が同じということもあり、小さい頃は一緒によく遊んでいた相手。中学や高校に入ると、思春期ということもあり、男女間で遊ぶことは気恥しくもあり、憚られた。
それでも、仲の良い数少ない男の友達だ。
そんな淳一は、半年ぐらいだろうか。会わないうちに見た目がずいぶんと変わっていた。
短く、黒の清純な髪の毛は伸びて、茶色が少し入っている。
顔は変わることはまずないが、それでも、髪の毛だけで人の印象は当人が思うより、はるかに違うものとなる。
淳一はそんな自分の他人の評価の変化に気づいているだろうか?
「うん。久しぶり」
そう言って笑顔を見せる淳一は、昔と変わらない。少し・・・ホッとした。
髪は変わっても、笑顔は変わらない。
「今帰りなの?」
淳一は綾音に聞いた。
「うん、そうだけど」
淳一も?綾音は続けて聞いた。
「そう。疲れたー」
オーバーなリアクションを取りながら淳一は答えた。
「部活は?」
綾音は聞く。確か、淳一は部活に入っていたはずだ。高校に入って間もないころに聞いたことがある。野球部に入った、そんな話を。
だから、まだ5時。こんな時間に帰ってこれるはずがない。
「もう、辞めたよ」
彼から笑顔が消える。そして、バツが悪そうにそう答えた。
「そうなんだ。それにしてもタイミング悪くない?」
野球のことはあまり知らない。けれど、もうすぐ三年生。どの部活でも共通のことだが、これから最後の大会が控えている、そんな時期だ。
「色々あったんだよ」
彼は言葉を濁しながらそう答えた。
答えたくなさそうな彼の表情を察して、綾音はそれ以上聞くのをやめる。
「そっか」
髪を伸ばして、茶髪にして。そこまでしたくなる何かがあったのだろう。
「綾音は最近何かあったの?」
「なにが?」
「背中が暗そうだった」
「別に、なんにもないよ」
暗い理由は彼のことを引きずっているから。
そんなことを久しぶりに会った幼馴染に言いたくはない。
「ふ~ん・・・。まぁ、いいや。この後暇ならどっか行かない?」
淳一は笑顔を戻し、綾音に聞く。
「唐突すぎない?」
苦笑しながら綾音は問う。
「忙しい?」
忙しいなら無理にとは言わないけど、淳一は続けた。
「そんなことはないけど・・・」
「じゃあ、行こうぜ。ずっと、遊んでなかったからさ」
微笑みながら言う淳一。
その言葉はきっと、綾音と遊んでなかったという意味なのだろう。
しかし、綾音にはそうは聞こえなかった。
何かはわからない。
けれど、別の意味が含まれている。そんな気がした。
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小高淳一。
彼がどう絡んでくるのか・・・。
次回は金曜日です。
土、日あたりにみなさんのブログ見に行きたいなと思っています。