1話 想い | love storys  ~17歳、私と君と。~

love storys  ~17歳、私と君と。~

どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

薄暗い闇夜に浮かぶ月は半分が欠けていた。


それはまるで、自分の気持ちを表しているようだ。


点々と散りばめられた空の宝石たちの輝く光はまだ淡いせいで、目に入るのは月ばかり。


悠太は壁に寄り掛かり、視線を下げる。


たくさんの人が通るこの街並みは、絶えず耳に雑音が入ってくる。


それを遮るように悠太はポケットからイヤホンを取り出して、耳につけた。


音楽プレイヤーを取り出して、何を聴こうか、そう考えていると、前方に菜穂の姿が映った。


黒髪のロングにかかる白いコート。


寒そうなスカートも白いコートとよく合っていて、彼女の可愛さをより一層引きだてていた。


さすが女の子だね。そんなこと思いながら、パーカーとジーパンの自分の服装と比較して自嘲する。


菜穂は悠太を見つけると、走りながら悠太がいる方向へと向かい


「待った?ごめんね」


手を合わせながら、申し訳なさそうに謝ってきた。


腕時計を見る。時刻は、18時55分。まだ約束の時間には5分ほどの余裕があった。


「謝る時間じゃないと思うけど?」


悠太は苦笑しながら続けて、ヒールで走ると転ぶよ、と冗談交じりにそう言った。


「待たせるのは好きじゃないんだよ」


菜穂は下唇を突き出してそう答えた。そして、悠太と同じように壁に寄り掛かる。


「ありがとね」


菜穂は顔だけ悠太の方へ向けて言った。


「なにが?」


悠太は菜穂を見ずにそう返す。


「今日、付き合ってくれて」


「別に・・・断る理由がないからね」


悠太が目を合わせない理由は二つあった。


ただ単純に目を合わせることが苦手だから。


初めての二人きり、デートみたいなこの状況で、顔が赤くならないはずがないからだ。


そしてもう一つ。


それは、後ろめたさや罪悪感。それらから来るものだった。


「てっきり、私は断られるものだと思ってたよ」


「なんで?」


「だって、クリスマスも断られたし・・・」


菜穂の表情が少しだけ曇った。


「あ、いや・・・それは」


悠太は言葉に詰まる。


と同時に、胸が痛んだ。


・・・バカみたいだな。


簡単には断ち切れないものだとは分かってはいた。


けど、それは所詮,他人の時。


いつかは、なんて都合のいい励ましばかりしてきた自分だったけど、実際に自分がその立場に立ってみると、そのいつかってのがいつなのか。そう問いたくなる。


それくらいの胸の痛さ。


「ごめん。今のはなし!どこ行こうか?」


そういいながら、にこりと笑顔を向ける菜穂。


「ん~・・・」


悠太は少し考えた挙句、何も答えが出ずに、菜穂はどこに行きたい?そう聞いた。


「え、私はどこでもいいよ」


菜穂は一番難しい答えを返してきた。どこでもいい。それが一番困る答えだ。


とは言っても。


普通、デートというものは男が行き先を決めるものだと相場で決まっている。そう考えると、菜穂の答えは当たり前のもので、行く場所を促した自分が間違いということになる。


だけど、これがデートなのかと言われたらそこも疑問ではある。


今日は、2人で遊びに行くということになっただけのことだ。


少なくとも、名目上はデートではない。なら、自分が決める必要は・・・。


いや、どちらにせよ、相手がどこでもいいといっている限り、自分が決めるしかない。


悠太は辺りを見渡しながら何があるのかを確認した。


さすがは渋谷というだけあってなんでもある。が、何もない。


たくさんの店はあるものの、特別興味をひかれるものはない。


なら仕方ない。


「じゃあ、とりあえず、何か食べる?」


何も浮かばない自分が情けない。


しかし、菜穂はそんな悠太の心情とは裏腹に笑顔を絶やさず


「うん」


と頷いた。



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