5話 月 | love storys  ~17歳、私と君と。~

love storys  ~17歳、私と君と。~

どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

これは何の因果なのだろうか。


今目の前に、好きな人がいる。


その人は他界した。


この世にはいないはずの人。


なのに・・・。


僕の見えるところに、すぐ側にいるんだ。


これは嬉しいことでもあり、つらいことでもある。


何で辛いのか。


君に触れることができないから。


君の体を触れれば、貫通して通り抜ける。


君から僕に触れることはできるらしい。


けれど、僕からは触れることはできない。


拷問に近いような・・・それほどに辛いこと。


友達だった僕達。


恋人ではなかった僕達。


傍から見れば、そんな関係なら触れなくてもいい。


そう思うかもしれない。


でも僕は・・・。


彼女に触れていたいんだ。


叶わないと分かっていても。


恋人じゃなくても、彼女は僕の『好きな人』だから。


「・・・まあ、だけど。そんなの贅沢すぎだよな」


僕は、彼女の寝顔を見ながらそう呟いた。


見れるだけでも、幸せなことだ。


それ以上は望んじゃいけない。


そう自分に言い聞かせながら、彼女から視線を外して窓の外を見る。


窓からは月が映っている。


それは綺麗な満月。


かけている部分は一切ない。


その月を見た時に、ふと君とした会話を思い出す。


『月って、純也みたい』


『何言ってんだよ』


並木道を歩く僕ら。


秋になっていたこの頃は、紅葉が綺麗で、僕達はこの道をゆっくりと歩いていた。


『月って、毎日形を変えるから。君も毎日違う表情を見せる。怒ってたり、笑顔だったり、不機嫌だったり、寂しそうだったり・・・』


『それは僕だけじゃなくて、みんなそうだよ』


僕は、地面に転がっていた石を軽く蹴る。


甲高い音が響いて、石はころころと転がって行く。


その石は君が歩く、前で止まった。


『月を見るの・・・私好きなんだよね。毎回表情を変えるし。それに私は一喜一憂するんだよ。今日は満月で嬉しかったり、新月で少しつまらなかったり・・・不安になったり』


そう言って、僕が蹴った石を君が蹴る。


『え?』


『だから・・・』


彼女は石が転がり、着く先を見ていたが、視線を僕の方に移して・・・


立ち止まった。


『君と月は一緒』


それは間接的に言った、彼女から僕への告白。


けれど、それに気づかなかった僕は


『なんだそりゃ』


彼女から視線を逸らして、月じゃなく、星を見上げた。





君は僕のことを月に例えた。


なら僕も、今の君を月に例えよう。


君は水面に浮かんだ月だ。


幻のようなもので・・・


触れることができない。


愛理。君はそんな月だ。


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