これは何の因果なのだろうか。
今目の前に、好きな人がいる。
その人は他界した。
この世にはいないはずの人。
なのに・・・。
僕の見えるところに、すぐ側にいるんだ。
これは嬉しいことでもあり、つらいことでもある。
何で辛いのか。
君に触れることができないから。
君の体を触れれば、貫通して通り抜ける。
君から僕に触れることはできるらしい。
けれど、僕からは触れることはできない。
拷問に近いような・・・それほどに辛いこと。
友達だった僕達。
恋人ではなかった僕達。
傍から見れば、そんな関係なら触れなくてもいい。
そう思うかもしれない。
でも僕は・・・。
彼女に触れていたいんだ。
叶わないと分かっていても。
恋人じゃなくても、彼女は僕の『好きな人』だから。
「・・・まあ、だけど。そんなの贅沢すぎだよな」
僕は、彼女の寝顔を見ながらそう呟いた。
見れるだけでも、幸せなことだ。
それ以上は望んじゃいけない。
そう自分に言い聞かせながら、彼女から視線を外して窓の外を見る。
窓からは月が映っている。
それは綺麗な満月。
かけている部分は一切ない。
その月を見た時に、ふと君とした会話を思い出す。
『月って、純也みたい』
『何言ってんだよ』
並木道を歩く僕ら。
秋になっていたこの頃は、紅葉が綺麗で、僕達はこの道をゆっくりと歩いていた。
『月って、毎日形を変えるから。君も毎日違う表情を見せる。怒ってたり、笑顔だったり、不機嫌だったり、寂しそうだったり・・・』
『それは僕だけじゃなくて、みんなそうだよ』
僕は、地面に転がっていた石を軽く蹴る。
甲高い音が響いて、石はころころと転がって行く。
その石は君が歩く、前で止まった。
『月を見るの・・・私好きなんだよね。毎回表情を変えるし。それに私は一喜一憂するんだよ。今日は満月で嬉しかったり、新月で少しつまらなかったり・・・不安になったり』
そう言って、僕が蹴った石を君が蹴る。
『え?』
『だから・・・』
彼女は石が転がり、着く先を見ていたが、視線を僕の方に移して・・・
立ち止まった。
『君と月は一緒』
それは間接的に言った、彼女から僕への告白。
けれど、それに気づかなかった僕は
『なんだそりゃ』
彼女から視線を逸らして、月じゃなく、星を見上げた。
君は僕のことを月に例えた。
なら僕も、今の君を月に例えよう。
君は水面に浮かんだ月だ。
幻のようなもので・・・
触れることができない。
愛理。君はそんな月だ。
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