みんなが走っている人たちを目で追っていく中。
僕はただ一人空を見上げていた。
関心があまりない・・・とかじゃなくて。
ただ、なんとなく。
気付いたら、奈々がバトンを受け取って走り出していた。
僕はそこで初めて、走る選手たちを目で追う。
現状は2位。
1位との差、3位との差はわずかだ。
僕の前・・・9人目の走者戦況は大きく変わるだろう。
9人目に順番が渡る。
南雲隼人。
このクラスで僕の次に早い生徒だ・・・が。
基本的に本気で走ることはない。
もしも本気で走ったら、僕より早いだろう。
だが、彼は生粋のめんどくさがり屋。
そして、目立つのが大嫌いらしい。
だから、あいつは狙うかのように、1位と3位の間。
現状維持をしてみせる。
くどいようだが、差は5mもない。
僕次第で、順位が決まる。
当然、アンカーってのは一番足が速いやつが務める場所。
1位はサッカー部。
3位は陸上部。
・・・まずいな。
なんてったって、僕は帰宅部だ。
勝てる気がしない。
全員が注目するこの場面。
抜かれるのだけは避けたい。
でもなぁ・・・。
隼人は涼しい顔で、僕の目の前まで来る。
僕はそんな隼人に少しイラッとしながらバトンを受け取り・・・走り出す。
バトンパスは上手くいったと思う。
だが、当然のように、1位と3位のクラスも見事なまでにそれを決めてくるから差は何ら変化はない。
やばいなぁ・・・。
僕はカッコ悪いのは嫌いだ。
というより、醜態をさらすのが嫌な自尊心が高い男だ。
だからといって、努力をする人ってわけでもない。
天才になりたい。
そんなことを想っている。
まぁ、自分自身が天才でないとは分かっている。
それでも、そうありたいと思っている。
カッコよくありたい。
そんなちんけな自尊心のために、僕はこの中で一位を・・・取るんだ。
そこにはまるで、クラスのみんなのためにとか。
そんな崇高でそれこそカッコいいものは入っていない。
ただ自分のために。
走り出した瞬間、すべての音がシャットアウトされた。
歓声、応援。
黄色い声援・・・。
いや、それは違うか。
ただ聞こえるのは、走っている時の足が地面を踏むたびに出る音だけ。
何も聞こえない。
誰の声も届かない。
1人きりの孤独な・・・戦い。
自分のために走っている僕にはそれは都合のよいものだけど。
・・・少し嫌だった。
10何秒間。
それは清々しく。
悪夢のようで。
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