何事も。
何事も自分の思い通りには行かないものである。
自分が願うようなことは基本的には起こらない。
さいころの目はいつだって、1とか2とかそんな不運な数字ばかりが出るんだ。
僕にはそんな人生が続いている。
それは自分だけじゃない?
みんな辛い中で生きている?
お前は幸せな方だ?
うん。
分かってる。
ただ、人間ていうのは幸せなら、さらにその上を望む生き物なんだ。
不幸せなら、普通を。
普通なら幸せを。
幸せな人はすべてが思い通りに行かないと嫌になる。
行かなかった瞬間に、それを不幸だと勘違いをする。
僕が今。
この現状で味わっているのは不幸?普通?
それとも・・・幸せ?
・・・自分自身でそんなのは分からない。
客観的なことなんて、自分じゃ知りようもないのだから。
今日のさいころの目はいくつを出すだろうか?
1・・・2・・・。
それとも3?
「雨宮君。次・・・出番だよ?」
そう声をかけられる。
下を向いていて顔は見えない。
でも、一瞬で誰かを判別することができた。
声で。
別に特徴的な声ってわけじゃない。
でも、ずっと聞いてきたから・・・分かるんだ。
顔を見なくたって。
そして、今どんな表情をしているのかも検討はつく。
きっと君は・・・
「うん。ありがとう。千草さん」
僕は奈々の顔を見ずに返事をする。
・・・雨宮君・・・か。
名字で呼ばれるのはいつまでたってもなれない。
自分から言い出したことなのに、苦しくなる。
「ホント・・・バカだよなぁ・・・」
自分にしか聞こえないような小さな声で僕は呟いた。
僕は、ポケットに入れておいたハチマキを手にとって、額に巻いた。
「頑張れ。玲」
「良一・・・お前は出ないの?」
「俺?でるはずないじゃん。そんなめんどくさいの」
「・・・ずるいな」
「賢いといってくれ」
「サボるのは賢いとは言えないだろ」
「エネルギーは大事にしないと。ファイト」
「はぁ・・・」
僕はため息をつきながら、良一に背を向ける。
グラウンドの真ん中。
そこで、走順の確認が行われた。
とは言っても、走るのは10人だけだから、ほんの数秒。
「はい」
「なんですかこれ?」
「アンカーはゼッケンをつける決まりなんだよ」
「あ・・・そうですか」
ハチマキの色と同じ白のゼッケンを渡された。
僕はため息をつけながら、渡されたゼッケンを着る。
「ため息をつくと幸せが逃げるんだよ?」
「あれ。千草さんもこれ走るんだっけ?」
「・・・忘れてたの?」
奈々は呆れた顔で僕を見る。
「うん」
「はぁ・・・」
「千草さんもため息ついてますけど」
「これはあきれたため息だから、ノーカウント」
「なんだよそれ」
僕は苦笑しながら天を仰ぐ。
雲はいつの間にか、僕らの真上まで来ていた。
太陽が隠れて、淀んだ空模様。
雨が降り出しそうな・・・そんな天気で。
『よーい』
パン!!
午前中最後の種目男女合同選抜リレーが始まった。
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