~side隆弘~
彼女を強引にでも引き留めることができなかった自分の甘さ。
自分のモノにするといっておきながら・・・。
結局は彼女の意思を優先させた。
彼女の腕を離した自分の手を見て思わず苦笑した。
彼女の顔を思い出す。
幸せそうな顔。
辛そうな顔。
泣きそうな顔。
嬉しそうな顔。
すべてが自分のモノになると信じて疑わなかった。
理菜が俺の彼女になったその時から。
でも、それは違った。
こうして他の人にそれが奪われる。
理菜の様々な表情。
それを作り出し、受け止め。
抱きしめて。
それをする役目は・・・もう俺ではない。
そう考えると・・・・すごく虚しくなる。
心にぽっかりと穴があいたような・・・。
そんな感じだ。
授業開始の鐘が鳴ってけっこう経つ。
俺は出ることをすでに諦めていた。
この錆びれた体と傷心な精神状態で出れるわけがない。
初めてのサボりがこんな理由で・・・。
自分の心の脆さに呆れた。
案外自分の心は弱いらしい。
俺は鉄格子に寄り掛かり空を見上げた。
ひどく綺麗な青空。
それは、今の俺にとっては苦痛でしかなかった。
今の俺の感情には雨とか曇り空とかが合っている。
だから、これは妬ましい。
・・・なんか。
振られてみて思う。
自分は今、すごく嫌な人間だ。
振られたことにより、自分の心に完全に余裕を失って。
本性がこうやって露出した時、思った以上に自分が嫌な人間であることに気付いた。
「きついなぁ・・・」
自然に漏れたその言葉はなにに対してなのかはわからない。
ただただ溢れ出しただけで。
ふと、一条の風が俺の体をすり抜けていく。
と同時に屋上のドアが開いた。
自然と俺の意識はそっちに向いた。
ドアが完全に開いて、姿を見せたのは・・・。
「坂本?」
「よっ。こんなとこで何してんの?」
坂本は手を上げて苦笑気味にそう言った。
「こっちのセリフだ。授業はどうした?」
「授業は休んだ。熱があって保健室で休んでたんだよ」
自分の額に手を当てる仕草を見せながら坂本はそう言った。
「あっそ。で、なんでここにいるんだ?」
「少し風に当たりたくて。目が覚めたら保健の先生いねぇんだもん」
「そっか」
俺はもう一度空を見上げた。
景色は変わらない。
風が吹いても雲はほとんど動きを見せることはなく、快晴が続く。
「隆弘は?」
「俺は普通のサボりだ」
「珍しいな」
坂本は目を丸くする。
「たまにはサボりたいこともあるんだよ」
「なぁ・・・まさか」
「ん?」
「振られた?」
「正解・・・何で分かった?」
驚きはあった。
しかし、それを俺はアクションで示すことはない。
なぜならそんな気力がもう残されていないから。
だから俺は表情だけでそれを表す。
「表情で。なんとなくそう思った」
「怖っ」
「・・・高橋さんに振られたんだ?」
「うん・・・」
「なんで振られた?」
「好きな人がいるんだってよ」
俺は淡々と坂本の質問に答える。
「へぇ・・・お前じゃなかったってことか・・・」
「どういう意味?」
「なんでもないよ」
坂本は独り言を呟いた後、1人勝手に納得したようだった。
「で?隆弘はこれからどうするんだ?」
俺の横に来て、坂本はそれに問う。
「なにがだよ」
「新しい恋を探すのか?」
「ん~・・・まだ分かんないなぁ。俺はずっと理菜が好きだったし、多分これからもそれは変わらない」
「それじゃあ、進めなくないか?」
「そうだな。そこはまだ未定って感じだな。坂本はどうなんだよ?」
「ノーコメントで」
坂本は意味深な笑みを浮かべながらさっきの俺みたいに空を見上げた。
これからの未来。
それは全く見えないもの。
けれど、必ず訪れるもの。
理菜という光がいなくなった俺は・・・これからどうなっていくんだろうなぁ・・・。
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