『裕哉さんはまさか今・・・。私の後ろにいるんですか?』
『正解。その通りだよ』
彼の甘い声は信じられないことを口にする。
『なんで・・・』
『せっかくだから、直接聞こうと思って』
『何をですか?』
『返事を・・・』
『・・・』
何て言葉を返せばいいのかわからない。
だって、私はこの人を振る気なのだから。
せっかくここまで来てくれたこの人を。
ただ・・・。
『理菜さん、電話切るよ?』
『はい』
ツーツーツー。
会話が途切れる音が流れる。
しかし、私たちの会話が終わるわけじゃない。
だって今。
私と彼はドア一枚を挟んで座っている。
すぐ側にいるのだから。
ただ、見えない。
声は聞こえるけど、見えることはないんだ。
こんなにもそばにいるのに。
「ドア・・・開けてもいいですか?」
彼に会いたい。
そして、見たい。
今の彼を。
半年以上の歳月が経って、彼がどのように変わったのか。
それとも変わってないのか。
大好きだった彼は今どのような表情をしているのか。
会いたいという感情は膨らむにつれて、まずいことが起きる。
振るという思いが、感情が薄れてきているんだ。
だってこれは想定外のこと。
起きるなんて少しも思っていなかったこと。
それが起きてしまったのだから。
私が彼を振ろうとしている理由の一番は会えないから。
私たちは会えないふたり。
そう確信していたから。
なのに、それは今のこの瞬間を持って完全に崩れさった。
会えないわけじゃない。
頑張れば会えるんじゃないか?
彼がこうやってそれを証明してくれた。
温もりだって感じることができる・・・はず。
「え・・・なんで?」
「なんでって・・・。裕哉さんに会いたいからです」
「それは少し嫌だなぁ・・・」
「なんでですか?」
「僕は今日、理菜さんに会わないって決めてるから」
「え・・・」
「あ、ただ告白の返事次第だよ。理菜さんが僕を振るなら会う理由がなくなるから、このドアを開ける必要がないってこと」
「・・・ずるい」
思わず、そんな言葉が口からこぼれる。
目の前にいて・・・たかがドア一枚の壁を越えたら会える場所にいて。
そんなそばにいるのに会えないのは辛い。
「ずるいって・・・」
彼は苦笑気味に私の言葉を繰り返す。
「裕哉さんは、私に会いたくないですか?」
「会いたいですよ?」
「だったら会いませんか?」
「それは、理菜さんの返事次第だって」
また・・・揺らぐ。
何度も決意をしたのに・・・また揺らぐんだ。
二者択一のこの問題はすごく過酷で残酷で。
私を苦しめ続ける。
だけど、これを作り出した元凶は私当人であるわけで・・・。
「僕は理菜さんに会いたいよ。でも・・・お別れをするのに会うのは意味がないじゃん」
「でも・・・」
「理菜さんは今彼氏がいるんだよね?」
「はい・・・」
「そっちを取るなら、この扉は開けないで僕はここからいなくなる。僕を取るならここを開ける。この二択だから」
「二択・・・」
この二択はどんな問題よりも難しい。
私の今後を左右する大事で重い問題だ・・・。
決めたはずの決意は簡単に崩れ去る。
傾いたはずの天秤はいつの間にか平衡を保っている。
私の想いはこれからどちらに傾く?
傾いた方がいい方は決まっている。
でも、これは理屈じゃない。
好きって思いの強さは、距離なんかじゃ計れない・・・。
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うだうだと続きます。
実のところ、どっちにするか自分が一番悩んでいるのでw
ただ!!
明日ついに理菜がどちらを選ぶのか・・・。
決まります!