116話 久しぶりのぬくもり・・・そして・・・ | love storys  ~17歳、私と君と。~

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どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

「由美!!」


君はそう言って私のもとに走ってくる。


「ゆ・・・う・・・き・・・く・・・ん」


私の瞳からはさっきとは違う涙があふれ出す。


でも、私はその涙を必死に止めようとする。


「裕樹君・・・なんでここにいるの?」


「由美に会いたかった・・・。ここにいけば・・・また会えるかなって・・・」


彼は息を切らしながらそう話す。


「ありがとう・・・」


私は笑顔でそう返した。


その時、彼が私の左腕を見る。


「なんだよ・・・それ・・・」


彼の言葉が震える。


「ああ・・・これ?」


私は見せびらかすように裕樹君に左腕をみせた。


もう、痛みはあまりない。


というより、慣れただけかもしれない。


「私・・・もう死のうかなって・・・けど、これなかなか死ねないんだよね。出血多量で死ぬらしいから・・・。ちゃんと調べればよかったかな?」


私はあえて気丈に振る舞った。


「な・・・んで?」


「なんでもだよ・・・」


「まさか・・・蓮のことか?」


「へぇ・・・」


私は驚く。そこまで知ってるんだ。


「なんで知ってるの?」


「・・・それは、後で全部話すよ。とりあえず、救急車呼ばないと・・・」


彼は携帯電話を取り出した。


「やめて!!」


私は大声で叫ぶ。


「え・・・?」


彼はよっぽど驚いたのか、その携帯を足元に落とした。


「私・・・もう生きたくないんだよ・・・。もう疲れたんだ・・・。お願いだから・・・死なせて?」


「由美・・・なんで、そんな蓮のことを引きずるんだ・・・?たかが、学生の恋愛だろ?死ぬほどのことじゃ・・・」


その言葉に少しイラッとくる。


「・・・そんなこと言うんだ。裕樹君の恋愛はそんなに軽いものだったんだね。私との恋愛も。『たかが』なんてレベルじゃないんだよ。私にとっては・・・」


私の手からかなり大量の血が流れている。


直感でわかる。


もうすぐ・・・かな・・・。


「そうじゃないよ。由美との恋愛はすごい大切なものだった」


「矛盾してるよ・・・」


「じゃあ、単純に言う」


彼は真剣な表情で私を見た。


なんだろう・・・。


「由美に死んでほしくないんだ・・・」


裕樹君は私を抱きしめる。


あったかい・・・。


久しぶりに感じた・・・。


裕樹君に温もり・・・。


ここで、羽を休めればいい。


でも・・・さ。


もう・・・決意は鈍らない。


私は裕樹君から離れる。


「もう・・・遅いんだよ」


「由美・・・」


彼が近寄ってこようとする。


「こないで!!お願いだから・・・」


私は彼から離れる。


君がこれ以上近づいたら・・・私は・・・。


早く死なないと・・・私の心が変わってしまう。


だから・・・。


私はもう一度カッターを取り出したんだ。


そのカッターを左手首に向けてもう一度振り下ろす。


バシュ!!


大量の血が飛び散る。


これで、死ねる・・・。


けど・・・おかしい。


痛くない・・・。


痛みを感じないんだ。


その理由をすぐ察した。


刺したのは、裕樹君の手の甲。


「裕樹君・・・」


「由美・・・お願いだから・・・死なないで」


彼は私にキスをした。


修学旅行以来のキス。


「僕は由美といたい」


自分の心に嘘はつけないなぁ・・・。


今の君の言葉を聞いて・・・思ったよ。


いや・・・君に会ってからもう勘づいてたんだけど・・・。


やっぱり、裕樹君が好きだ。


『私も裕樹君といたい・・・』


その言葉を言おうとした瞬間、見えていた景色が真っ暗になる。


もう・・・血が足りない。


私はそのまま倒れ込み識を失った。


雪の上で血を流しながら・・・。