107話 「おやすみ」 | love storys  ~17歳、私と君と。~

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どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

~side裕樹~


由美が僕に背を向けて歩き出す。


僕はその背中に「ばいばい」と呟く。


けど、その言葉は振り向いてほしくて言ったわけじゃない。


ただ・・・返事を返しただけ・・・。


僕は彼女の背中を見送るのをやめて、


灯台の方へ歩いていく。


昼間に由美と蓮がキスをしていた場所だ。


灯台はひっそりと静まり返って何の物音も聞こえない。


僕は空を見上げた。


そこは漆黒の闇。


「星は・・・見えないな・・・」


僕がそうつぶやいたと同時に、顔に冷たい滴があたった。


雨が降ってきたらしい。


雨は次第に強さを増ししていき、気付いたら大雨となる。


全身が冷える。


その時誰かの泣き声が聞こえた。


これはきっと由美の声。


「いかなくていいの?」


後ろから声が聞こえて僕は思わず振り返る。


・・・そこにいたのは楓。


制服姿で全身がずぶ濡れだった。


「なんでここに・・・?」


僕は当然の疑問を楓に投げかけた。


この時間にいるはずがないのだから・・・。


「いかなくていいの?」


楓は僕の質問に答えることなく、もう一度聞いてきた。


「どこにだよ・・・」


「あそこに・・・」


楓はさっきまで僕らがいた場所を差す。


最北端のあの場所・・・。


「由美が泣いてるよ・・・」


「その涙を止める資格は僕にはないよ・・・」


僕は俯く。


「その選択に後悔はない?」


楓の声が急に変わる。


いつもよりずっと低く、重みのある声。


僕は少したじろくが


「後悔は・・・ないよ。これが僕らの決めた最善の選択肢だから・・・」


大雨には不釣り合いな笑顔で言った。


すると楓の真剣な表情が崩れる。


「そっか。なら・・・夏帆と幸せに・・・ね?」


そう言って僕の額に手を置く。


そして・・・


「おやすみ・・・」


楓のその言葉を聞いた途端、僕の意識が途切れた・・・。


***************


気がつくと、そこはベッドの上だった。


まさか・・・あれは全部夢!?


僕は無意識のうちに携帯を開いて、アドレス帳を見る。


けど・・・そこには『佐伯 由美』の名前はなかった。


もう・・・由美と会うことはないんだ・・・。


永遠に・・・。