106話 ありがとう。そして・・・さようなら。 | love storys  ~17歳、私と君と。~

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どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

虚しい電子音とともに裕樹君のアドレスが消えた。


後悔はない?


・・・ないはずがない。


好きな人のアドレスを消す・・・。


これがもし・・・片想いならどれだけどれだけ楽だっただろうか?


嬉しいはずの両想いはここにきて最悪の両想いになったんだ。


「ねぇ・・・裕樹君」


「ん・・・?」


「これで・・・君のこと忘れられるかなぁ・・・?」


聞いても意味がない。


それは分かっている・・・。


けど、否定してほしくてそう言った。


でも・・・君は無情にもその期待を・・・


「それは由美次第だよ。でも、少なくとも由美が蓮のことを本当に好きなら、蓮で心は満たされてくはずだよ」


「そう・・・だよね」


私の目からは一度止まった涙がまた零れる。


「泣くなよ・・・」


泣かれたら・・・僕まで辛くなるから・・・。


きっと君はこんなこと思ってる。


「私さ・・・裕樹君が運命の人だって信じて疑わなかった。君となら・・・遠距離でも辛くないって」


「・・・」


君はただ黙って私の話を聞く。


「でも・・・君のことを想ってるだけじゃだめだった。私の心に穴があいて・・・そこに蓮君を入れてしまった。拒まなかったんだよ。君という存在が頭の中にいながら・・・」


罪悪感で私は心が締め付けられる。


「別にそんなこと言わなくていいよ。お互いに、同じことをしてるんだから。僕らは・・・」


そう言いながら、裕樹君は私の手を握る。


「この温もりも・・・もう感じることはない」


裕樹君が言う。


「そうだね・・・君の手のぬくもりをもう感じれない・・・」


言ってて虚しくなる。


すると彼はわたしを抱きしめてくる。


温かい・・・。君を感じれる。


「離れていても心は一つだと誓った。でも・・・誓いは消える。触れ合っていられるのは今だけ・・・」


そんなこと言わないでよ・・・。


言葉にはできない。


言う資格なんてないんだから。


「うん」


私は彼から離れた。


君から離れられるのが怖くて・・・私から離れたんだ。


でも・・・手は握ったままだ。


「この手が離れたら・・・もうお互いを見るのはやめない?」


彼がそう言った。


「そうだね・・・。辛くなるだけだから」


そう言って私は頷く。


私たちはその後、無言で見つめ合って軽くキスをした。


そして・・・ゆっくり手を離す。


「ばいばい・・・」


私は手を振った後、踵を返した。


彼の「ばいばい」の声が聞こえる。


でも、もう振り返らない。


裕樹君もきっと振り返ってほしいとは思ってないんだ。


私は早歩きで歩く。


これで・・・いいんだよね?


お互いのために・・・。


空からは雨が降り出していた。


それは次第に強くなり、大雨となる。


私はふいに足を止めて、名残惜しそうに振り返った。


けど、もうそこには君の姿はない。


それを確認した途端、足の力が抜けてペタンとその場に座り込む。


「裕樹君・・・。うああぁぁぁ!!」


私のその泣き声は公園中に響き渡る。


もしかしたら裕樹君にも聞こえたかもしれない。


でも、そんなこと考えてる余裕もなかった。


だって・・・大切で・・・大好きな人が私の目の前に一生現れることがなくなってしまったのだから・・・。


君の手の温もりも・・・雨の冷たさでもう感じない。


裕樹君は・・・もう・・・。


私の涙は雨で流れる。


けど・・・私の心の涙は流れない。


辛い・・・よ・・・。


死ぬわけでもないのに、裕樹との想い出が走馬灯のように脳裏に浮かぶ。


消しゴムを落としたあの時、君とのファーストキス。


いろんなことがあった。


でも、これからは裕樹君のことを考えちゃいけない。


蓮君だけを見るように・・・。


お互いに別々の道に行くことを決意したんだから。


ありがとう。裕樹君。


そして・・・さようなら・・・。