僕は校門で立ち止まる。
まだ、掃除をしている夏帆を待つために。
たくさんの生徒が校門を通り過ぎる。
男同士、女同士でわいわい話しながら帰る生徒。
一人でイヤホンをつけて帰る生徒もいる。
そして・・・男女で帰る生徒。
もし、その当人である二人が否定しても傍から見ればカップルだ。
僕と夏帆も一緒に帰ればそういう風に見えるのかもしれない。
でも、まあけっこう楓と帰る時あるからな・・・。
「ごめん、待った?」
少し小走りで夏帆はやってきた。
「デートじゃあるまいし・・・そんな息切れしてまで走ってこなくていいよ」
僕は少し素っ気なくそう言って歩き出す。
「なんか、冷たくない?」
夏帆はそう言って僕の隣に並ぶ。
「普通だよ。ていうか、彼氏はどうしたの?」
「ああ・・・隼人のこと?」
夏帆の表情が少し強張ったように見えた。
というより少し嫌悪感がある表情・・・。
なんで・・・?
「どした?」
僕が聞くと、夏帆の表情が戻り
「なんでもないよ。隼人は委員会らしい」
なんか・・・違和感を感じるのは僕だけなんだろうか・・・?
「それよりさ・・・」
夏帆は僕の方を見る。
「裕樹君って呼んじゃだめ?」
「・・・なんで?」
「そう呼びたいから。理由なんてないよ。ただ・・・・」
夏帆は下を向く。
「ただ・・・?」
「そう呼ぶことで私の過去が見えるかもしれない・・・そんなことを思ってるから・・・そんなバカみたいなことを願ってるから・・・」
「・・・」
僕はなにも言わず夏帆を見る。
「ごめん・・・こんな訳のわからない話して・・・」
「え・・・?いや・・・」
「裕樹君には何でも話せる気がするんだ。包容力があって・・・。おかしいよね・・・。なんでだか・・・まだほとんど話したこともないのにそんなことを感じちゃうんだから・・・」
「もしも・・・」
僕は口を開く。
「もし、夏帆の記憶がなくなる前に傍にいたのが僕だったら・・・どうする?」
「え・・・?」
夏帆は目を見開いて僕の方を見る。
僕は言った後、すごく後悔した。
君の表情がさっきとは一変してしまったんだから。
ほんとはもう君とは一緒にいないつもりだったのに・・・。