「ふぅ・・・」
僕は気を紛らわせるためにテレビをつける。
別に見たい番組もなく、チャンネル変え続けて
てきとうなチャンネルで固定する。
それを何の感情を込めるわけでもなく、
ただ漠然と見るだけ。
その時、家の固定電話が鳴った。
・・・嫌な予感がする。
僕は立ち上がり、電話がある場所に向かう。
そして、目の前に立ち受話器を取った。
「もしもし・・・」
『裕樹・・・?』
その声はすごく昔から聞き覚えのある声。
自分の母親の声・・。
「久しぶり・・・」
『久しぶりね。手紙は読んでくれた?』
「ああ・・・数分前にな」
僕は少し皮肉交じりに言う。
『そう・・・。来てくれる?新潟に・・・・』
「嫌だって言ったら・・・?」
『・・・あなたへの仕送りがなくなるだけよ』
心なしか受話器の向こうで聞こえる声が冷たく感じた。
「それは来いってことだよな?」
『その通りよ。私も悪いとは思ってるわ。ほんとなら東京にしたかった。けど、仕事の都合上・・・。学校も変えてしまって・・・それに・・・』
「・・・やめろよ・・・。そんな三文芝居」
『なんだ。わかってたのね。まあ、とりあえず、あなたに選択権はないわ。新潟に来なさい』
「ああ・・・。わかった。一つ聞いていいか?」
『いいわよ』
「なんで、僕を呼ぶ必要がある?僕をあれだけ嫌っていたあなたが・・・」
『・・・それは言わないわ・・・なんとなくね・・・』
「なんだよ・・・それ・・・?」
『じゃあ、とりあえずあなたが来る日時だけ教えておくわ。8月10日よ』
僕は反射的に近くにあったカレンダーを見る。
今日は7月25日。
あと15日前後か・・・。
『それまでに親しい人に別れを言っときなさい。今の家と学校には全部こっちでやっておくわ』
「さすが・・・玉の輿に乗っただけあるな」
『ありがと。裕樹も感謝しなさいよ。これだけいい生活してられるんだから』
「そうだな。だから・・・なおさら分からないよ。僕をまた父親に会わせる理由が・・・」
『簡単なことよ。夫婦には子供がいた方が評判が良くて円満に見えるから。ただそれだけ・・・特に日本ではね。田舎という点も考慮してね・・・』
「計算高いな。そこまで考えてるのかよ。わかった」
『じゃあ、詳細はファックスか何かで知らせるわ。じゃあね・・・』
そう言ってあの人は電話を切った。