犯罪心理の専門家じゃないけれど、それにしてもわからない/「毒婦。」読みました | プロレスバカなオレの母が認知症になったからってキミには知ったこっちゃないかな?

プロレスバカなオレの母が認知症になったからってキミには知ったこっちゃないかな?

リングパレス育ち、北海道に住む50歳、ファン歴35年のプロレスバカです。
プロレスについてのアレコレやテレビネタ、日常の想いを綴ってます。
そして2016年からは母の認知症についても書き残すことにしました。



北原みのり「毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記」。

「婚カツ詐欺」、周辺の男性が次々に不審死した事件で逮捕、起訴された木嶋佳苗被告。
その100日に及ぶ一審を傍聴した筆者による週刊誌での連載記事をまとめ、加筆修正、書下ろしを加えたもの。
この事件に関してはもう一冊のほうも話題になっていますが、ラジオで某パーソナリティーがこちらをすすめていたのがきっかけで購入しました。

面白いです。もちろん不謹慎な意味ではなく。一気に読み終えました。
どういう事件だったかなあ…と思い出しながら読み進めていくうちに大きな疑問が湧いて来ました。
詐欺はわかる。いや、詐欺を肯定しているのではなく、詐欺をしてでも金銭を手にしたいというのは動機として理解出来る。
しかし起訴されたように複数の男性が亡くなったのが殺人事件であるとしたなら、なぜ被告は男性たちを殺さなければならなかったのか? その動機、理由がわからない。
さんざん大金を貢がせていたとはいえ普通に男女の間柄で別れ話が持ち上がったり、それがもつれることはいくらでもある。
返金を迫られることを恐れたからなのか? 詐欺とわかって逮捕されることを恐れたからなのか?
しかし結果的に被告は3件の殺人で起訴され、一審では死刑判決を受けてしまっている。

被害男性の一人は車の中で練炭による一酸化炭素中毒死で発見された。
一見、自殺かと思われたがロックされた車内に車のキーが無い、火をつけた跡のあるマッチ棒が見つかった一方でマッチ箱が見つかっていない。殺人事件としてはあまりにも片手落ちな殺人だ。
事件以前の被告の窃盗や詐欺の前歴も明かされているが、だからといって被告がそうした犯罪嗜好にあるのだと一言で片付けるのは性急に過ぎる。

普通の生活をしている者が犯罪者の心理や動機を理解するのは本来難しいのだとは思う。しかしこの事件については本書を読み進んで概要を知るにつれ、余計にその思いが強くなる。
それは被告自身が事件について、あるいは自分自身について、まったく語っていないからだ。
一審判決後に被告の手記も公開されているが、その手記にも、あるいは一審で語られた被告の言葉のどこにも、被告の本心、真実が見えてこない、伝わってこないのだ。

本書では被告を通じてセックスの価値観、恋愛に何を求めているのかなど、普段はあまり深く考えることはないけれど、しかし根源的な問題について問われているように思う。
男が考える結婚、女が求める結婚、男がほしがる女、女が求める男。それは本当に自分の求める愛や恋なのか?

最後の章では裁判員制度や報道、男目線と女目線、あるいは「男社会」と言われ続ける日本の構造にまで思いを巡らせることも可能な一冊。
面白かったです。




毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記/朝日新聞出版
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