日本海から太平洋までを北アルプス、中央アルプス、南アルプスを踏破しながら進むレース(TJAR2024)が始まりました。今年はNHKが放映してくれないのでがっかりなのですが、各選手が付けたGPSを追ってスマホから各選手が何処にいるのか追う事が出来ます。皆寝ないで5日間から8日間の間走り続けます。山を縦走する時は1桁まで下がる寒さに耐え、道路を走る時は40度近くの酷暑を耐え、眠る事無く3000m級の山々を415km走り登る事はどんなに辛い事でしょう。このレースに参加する為に10年準備した選手もいますが、安全や読図に関する筆記試験、実技試験、予備選を勝ち抜き、最後に運命の抽選を勝ち抜かねばなりません。毎年ボロボロになり、足を引きずりながら太平洋の海岸に辿り着いても、賞金も商品も有りません。でもこの大会に参加したい人は毎年増えているのです。

 

レースと言っても、殆どの時間はたった一人なので、「もう止めろ諦めろ」と囁く自分と対話しながら進んでいきます。真っ暗な山中をさまよいながら、参加者は皆こう言います「自分の限界が見たい、でもリタイヤしたい気持ちに勝てない。自分の弱さばかりが見えてくる」。山の苦しさ、地上でのマラソンの苦しさを知る人はこの気持ちが分かるのでは無いでしょうか。

 

2年に一回の大会ですが、これまで撮ったNHKの番組は録画し、何十回となく見ました。涙が零れる時が有ります。生きる事は、自分の限界を見る事か。何時止めても良いのに、あんなにボロボロになって、フラフラになって走り続けるのか。自然の中では無力な人間だと分かっても、一歩を進めるのだろうか。生きる事はそう言う事か。そんな事を感じさせてくれるからです。

 

私達癌患者も、それぞれの道を歩いています。ゴールに達成する人もいれば、途中で棄権する人もいるでしょう。でも同じ様に真っ暗な寒い山中を1人で、自分は何をしているのだろう、何の為に走り続けるのだろうと自問自答しながら、答えを探し続けているのでは無いでしょうか

LISTEN社さんからお借りしています