自宅の有る町内を抜けると信号機が有り、そこを右に曲がると坂になります。車の窓から何気なく細い歩道を見ると、80歳は優に超えたご婦人がシルバーカーを押して坂道を登っています。今日は不急不要の外出は控えるようにと、熱中症最大危険警報が出ているのですが。マスクまでして、暑いだろうなと思いながら、私の車はエアコンを付けて通り過ぎて行きました。

 

よくよく考えてみたら、好きでご老人もそんな外出している訳では無いのでしょう。近くのスーパーが丘を越えた所に有り、病院やクリニックもその辺りに集まっています。お一人で暮らし、交通の手段が限られているならば、炎天下に坂を押して行くのもやむを得ない事なのでしょう。田舎に1人で住む90歳を超えた母も同じことをしているのだろうな、とふと思い出されました。

 

夜ボランティア活動を終え帰宅すると、会社の健康診断結果が届いていました。色々書かれていますが、そんな所は読みません。読むのは肺のX線写真の結果だけです。呼吸器内科の経過観察が半年ごとになったため、久しぶりのX線結果は重要でした。検査を受けた病院の読影師さんは優秀で、毎年肺に色々見つけてくれ、私に不安を与えてくれます。昨年は手術下の中葉内の影、今年は同じ右側の下葉の影で、ご丁寧に大文字で色々書いてくれています。詳しくはCTを撮らないと分かりませんが後3か月以上待たねばなりません。自覚症状が有るのだから、何かは出て来るだろうなとは思っていましたが、想像通りでした。これまで会社のX潜像結果を見る度に落胆と不安の連続でしたが、3年間同じ事の連続だと「まあ、なるようになるだろう」と言う気持ちになって来ます。本当に不安が心を満たすなら、至急担当病院でCTを取る様主治医に頭を下げるしか有りません。本当に必要なら炎天下でも、誰の助けも借りずにシルバーカーを押して坂を上るしか無いのです。でも本当は、再発していたら、と言う恐怖の方が心配する気持ちより勝っているから、「まあ、なるようになるだろう」と納得しているだけなのです。

 

母の事もどうにかせねばならないのですが、又母と喧嘩になるのかと思うと憂鬱で、行動に移す事が出来ません。自分を騙しながら、そうやって今夜もずっとオリンピック放送を黙って見ているだけなのです。