癌になってうつ病、適応障害等の気分障害にならない人は居ないと思います。当たり前の様に毎日を暮らしていて、ある日いきなり死を意識せねばならない時、人はどん底まで落ちてしまいます。そのどん底の状態から抜け出せないとうつ病になり、少し前を向く事が出来ても有る所で辛さや恐怖で動けなくなれば適応障害です。40% 程度の方々は何らかの気分障害をずっと抱えていると聞きます。私も40%に含まれるのでしょう。

 

頭の中でふと生まれた悲しみや恐れの感情が、体に働きかけ(無気力、涙が止まらない、自律神経の不調)、その後医師や治療に対する怒りや自分自身に対する劣等意識に変わり、そして元の悲しみや恐れの感情に戻って来ます。それが何度も繰り返し頭の中で回転すると、負の感情は強化されます。だから何時まで経っても「同じ場所」で苦しまねばなりません。私自身、この恐怖の感情は無くならないだろうなと思っています。

 

医療現場で使われるCBD(認知行動療法)は、この恐怖の回転を、どこかで別の感情に変えて行こうとします。Youtubeで拝見する癌治療医のお話も、多分に気持ちの変化を、別の方向に変えて行こうとするのが見えます。「人は結局死ぬ動物なんです、だから、どうやって素晴らしい人生を送るかが重要ですよね」そう語りかけられると、そうかなと思ってしまいます。でも診察日が近づくと、結果が良く無いと、同じ負の回転が始まります。あれ程自分の受け取り方を変えようと思ったのに、そう反省しても、ふと湧いてくる感情には勝てません。大阪大学医学部の研究では、私達患者が最も深いうつ状態に陥るのは、癌の再発を知らされた時だそうです。本当に分かります。そしてそう言う時こそ、「素晴らしい人生」を考え直さねばならないのでしょう。常に最悪を考えておくと言うのも、負の回転の切り替えの予行演習なのでしょう。癌患者だけが行う、災害に対する予行演習です。