会社時代の友人は幼くして胆のうを摘出、その後も様々な内臓疾患を経て、腎不全による透析を続けていました。でも末期腎不全に陥り、最終的に奥様から腎臓を一つ移植しました。幼い頃から大変だったと笑って語りますが、腎臓が完全に死んだ頃は随分辛そうでした。

 

水分摂取が制限され、タンパク質も殆ど取れません、塩分やエネルギー摂取は勿論、カリウムの摂取制限が有るので、会社では何時も机に頭を付けて苦しそうにしていたのを思い出します。会社に来るだけで体力が無くなるのです、そう彼は言います。どうしてもタンパク質が欲しくて、駅前の焼き鳥屋でツクネを一つ買って、それを電車に乗っている間ずっと舐め続けたそうです。最後の唾液が喉に落ちて行く時、残念で辛くて、惨めでしたと言います。会社の飲み会でも彼は飲まず食わずのまま、ずっと仕事の話をしていました。暴飲暴食している周りの仲間を直視できなかったのだと思います。腎臓移植後もCKDステージ3aから良くなる事は有りませんでした。腎臓は一つ与えた奥様の腎機能も同様に悪くなりました。

 

それでも彼は私が仕事を辞める時、癌でも生きている限り頑張れます、そう言って送り出してくれました。今も彼はずっと食事制限を耐え、仕事に打ち込んでいる事でしょう。「生きている限り頑張れます」苦しみを乗り越えて来た者だけが言える言葉なのでしょう。スーパーの食品売り場で焼き鳥を売っているのを見た時、ふと彼の事を思い出してしまいました。