自分の事を自慢したがる人間は、自己肯定感が低いと言われています。その典型が自分だと分かっているので間違い無いでしょう。それでも肺癌になる前、仕事を辞める前までは、ある程度の肯定感は有ったのですが、それがあっけなく崩れて行くのを感じる事が有ります。

 

同窓会の日、一人で長距離難関の雲取山に出かけた妻から下山報告が入ります。予想していたのより2時間程早かったので、強風の為に途中で引き返したかなと思っていました。帰宅して、何処まで行ったのと聞くと、頂上まで行ったと答えます。私は何もしゃべらずに自室に閉じこもり、色々考えます。私が一緒なら、途中で下山、それも倍の時間がかかるでしょう。その時、ふと、自分はもう邪魔だなと感じました。自分がいなければ妻は好きなスピードで何処までも行けます。雪が深くても、強風でも、高度が3000m近くても、距離が20kmになっても登山を楽しめるでしょう。私がいると何処にも行けません。その時、自己肯定感がバラバラと私の足元に砕け散って行きました。

 

肺癌になる前は、ぐいぐい妻を引っ張って行くスピードクライマーでしたが、今はお荷物です。肺を失う前は、何とかなると思っていましたが、幻想でした。根拠なき自信はうぬぼれに過ぎません。現実はそこに有り、それを受け入れられない事が自己肯定感の低さを表しています。それでいいじゃん、同情してもらって妻について楽々山歩きすれば。それを簡単に受け入れられる程、私は自分の事が好きではなく、肯定感は低いのです。肺癌が悪いのではなく、肺癌になり肺を失ったから、ようやく気づけた自分の弱さです。