良く言われますが、肺癌は分子標的薬の開発により、治療上の画期的な発展がみられました。手術以外での殆どの治療法は、免疫チェックポイント阻害薬と共に分子標的治療薬と言っても過言ではない時代になって来ました。でも、どの薬剤も耐性と言う問題を抱えています。何故耐性は生じるのか不思議です

 

癌細胞は薬剤から逃れる為に、薬剤耐性持続細胞(DTP)を発生させます。DTPは薬剤による細胞死を逃れる為に、一時的な休眠状態に入ると言われていて、再発のチャンスを狙っていると言われます。同様に癌細胞の老化死も一時的に停止する戦略を取っているようです。これらによりDTPは長い周期をかけて再プログラミングを行い、薬剤耐性を獲得します。なんと悪賢い細胞でしょう。これに対して人間は、DTPを標的にする臨床モデルも、耐性プログラミングを防ぐ臨床モデルも未だ開発出来ていません。遺伝子変異の方向は見えてきているので、当面は遺伝子が変異する度に有効な薬剤を開発し続ける事が課題でしょう。又、休眠していない、活動中の癌細胞を抑えるには、殺細胞性抗癌剤や別のゲノム治療薬との複剤使用も効果が見込めます。癌細胞が一時的な休眠状態に入る様に、人間にも忍耐と言う力が有ります。今は耐える時で、出来る事をやるしか無いのかも知れません。

 

何度も書きますが、誰もが諦めていたC型肝炎が、ギリアド社のハーボニー、ソバルディの開発により奇跡的な治癒が可能になった前例が有ります(インターフェロン使用40~70%治癒、ハーボニー95%~100%治癒)。癌細胞の生き残り戦略は巧妙で遺伝子異常により状況は異なります。だから簡単では無いのでしょうが、人間は癌の治療においても必ず次の驚異的な発明をもたらすと信じています。