御伽草子 一本菊(ひともとぎく)下-22
(・・・せかれける 岩まの水を しらすして)もらさすとのみ いのりけるかな
御車にて。わかれしときの はしめより。いま あふまでの。くるしさ かたらせ給ひて。御めのとこの。さのきの少しやうの さとへ いり給ひぬ。御よろこび かきりなし。八月は ごさんの月なれば。よう/\の 御いのりあり。そのしるしにや。御さんへいあんに わかみや いで来り給ふ。宮の御はゝにようご きこしめし。いでや あやしの ものなりとも。宮のわりなく おぼさば ちからなし。いはんや うだいじんどのゝみやばら。わざともの事也。しかも 若宮出来り給ひたる事の ありがたさよ。あやしの ところにて いかにとて。御むかひのくるま 七りやう。御そばには。くれなゐの十二はきの た
ごさんの月=5×3=15の月、十五夜。普通は「三五の月」と言う。
よう/\の 御いのり=様々の御祈り
御さんへいあんに=? 五三平安に? ご指摘が有ったとおり「お産の平安」に。
わかみや いで来り給ふ=若宮、兵部卿の宮と姫君の子供。赤ちゃんが誕生。
にようご=女御、兵部卿の宮の母。
わりなく=わりなし、仕方がない。どうしようもない。
あやしの ところ=賤しの所。「怪し」の意味「不都合な」もあるかな??
御むかひのくるま=お迎えの車
救い出された姫は、
取り敢えず乳母子の里へ避難。
兵部卿の宮と姫君の間に、
若宮が出て来たので、
母上は、大喜び。
姫君と赤ちゃんを迎えに、
御車を出します。
コロリン師匠