御伽草子 一本菊(ひともとぎく)中-22
(・・・くかひの海にぞ うかみける)
さても。宮は三条へいらせ給ひて御らんずれば。こゝかしこに なく
こゑのみして。いつしか さひしげ也。ひめ君は あるかなきかの け
しきにて。しづみふさせ給へり。宮あさましや こは いかに。いま
をの/\ いのりをして あんをんに。今一度。見たてまつり
みえたてまつらんとは。ねんじ給はて。いまはしく。一遍に。なき人
を とり出したるやうに おはするぞ。女ばうたちも。御まへちかく
候て。なぐさめまいらせよ。これにては あしかりなん。いづちのかたへ
も ぐしまいらせんと。思ふなり。さりともなどか。兵衛のす
け。今一度 都へ入りて有るべき時。たのもしく おほせなんと。なぐ
さめまいらするところに。月みね 御文と申せば。又むねうちさ
はぎて 御らんじけるに。たゞなくよりほかの事なし。くどきか
さっそく宮がお見舞いに。
姫君を慰め、
女房達を励まします。
コロリン師匠