宇治拾遺物語 巻三
雀報恩の事-3
近江には、ご存知「舌切り雀」の民話があります。
その元になった御伽草子があります。「すゝめの夕かほ」です。
更に、その元になったのは、「宇治拾遺物語・雀報恩の事」です。
「舌切り雀」の元になったお話・3回目を、お楽しみください。
(・・・きりあけてみれは 物ひとはた入たり な)
にゝかあるらんとて うつしてみれは 白米の入たる也 思かけす あさましと
おもひて大なる物に みなをうつしたるに おなしやうに入てあれは たゝ
ことには あらさりけり 雀のしたるにこそと あさましくうれしけ
れは 物に入てかくしをきて のこりの瓢※ともをみれは おなしやうに入
てあり これをうつし/\つかへは せんかたなく多かり さてまことに
たのしき人にそなりける 隣里の人も見あさみ いみしき事
に うらやみけり 此隣にありける女の子ともの いふやう おなし事なれと
人は かくこそあれ はか/\しき事も えしいて給はぬなと いは
れて 隣の女 此女房のもとに来りて さても/\ こはいかなりし
事そ 雀のなとは ほのきけと よくえしらねは もとありけんまゝ
に の給へといへは ひさこ(瓢)のたねを 一おとしたりし植たりしよりあ
●(る・欠)斗(ばかり)也とて こまかにもいはぬを 猶ありのまゝに こまかにのたまへ
と せつに とへは 心せは(狭)くかくすへき事かはと思て かう/\ こしおれた
あさまし=意外なことに驚いたり、あきれたりする意が原義。
よい場合にも悪い場合にも用いたが、現代語では悪い意味にだけ使う
瓢※=前回「種」としましたが「瓢」に改めます。失礼しました。
理由は「残りの種」では、文脈がおかしい。「残りの瓢(ひさご)」で通じる。