無名抄と無名草子の小町
無名抄 小野小町の事 鴨長明
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ある人いはく。なりひらの朝下(臣)。二条のきさきの。いまだたゞ人に おはしましける時。ぬすみとりてゆきけるを せうとたちに。とりかへされたる よしいへり。この事。又日本記の式にあり。ことのさまは。かの物がたりにいへるごとくなるにとりて。うはひかへしける時。せうとたち。そのいきどをり やすめがたくて なりひらのあそんの。もとゞりをきりてげり。しかあれど。たがためにも よからぬ事なれば。人もしらず心ひとつにのみ思ひてすぎけるに。なりひらのあそん。かみおほさんとて。こもりゐたりけるほどに。哥枕ども見んとて。すきのことよせて。あづまのかたへゆきけり。みちノくにゝいたりて。やすじまといふところにて。やどりたりける夜。野の中に。哥の上の句を 詠ずるこゑあり。その詞にいはく秋かせの ふくにつけても あなめ/\といふ。あやしくおぼえて。こゑをたづねつゝこれを もとむるに。さらに人なし。たゞ死人のかしら ひとつあり。あしたになを これをみるにかのどくろの。そのかしらのめのあなより。すゝきなん ひともと おいゝでたりける。そのすゝきのかぜになびく をとの。かくきこえければ。あやしくおぼえて。あたりの人に この事をとふ。ある
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人かたりていはく。小野小町。このくにゝくだりてこの所にして いのちおはりにけり。すなはちかのかしら これなりといふ。こゝになりひら あはれに かなしくおぼえければ。なみだをゝさへて下の句をつけゝりをのとはいはじ すゝきおいたりとぞ つけゝる。その野をば。たまつくりの をのといひけるとぞ侍る。たまつくりのこまちと小野小町と。おなじ人かあらぬ物かと 人々おぼつかなき事に申て。あらそひ侍しとき人の かたり侍し也
紛らわしい名前だけど、「無名草子」では、小町の部分
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(おいのはてこそ うたてけれ)・・・にこそ侍 かばねになりた(て?)のちにてもあきかぜの ふくたびごとに あなめ/\をのとはいはじ すゝきをひけりなどよみて侍(る)ぞかし ひろき野のなかに すゝきのおひて侍りける かくきこえたるなりけり いとあはれにて そのすゝきを ひきすて侍りける よのゆめに かの かしらをば おのゝこまちと申す ものゝ かしらなり すゝきのかげに ふるゝたびに めのいたく侍に ひきすて たまひけるなん いとうれしき このかはりには うたを・・・
無名草子の成立1196年~1202年無名抄の成立1211年~1216年
時代的には、同じ鎌倉時代の歌論書・文藝評論書であるが、「無名草子」の方が成立時代が古い。