小 町 草 帋
(・・・草のころも)に 草むしろの。ふかきこゝろは あらずして。日かずつもれば みちのくの。しのぶの里に ほとちかし。みやこをは。かすみと ともに出しかと。けふしら川のせきにも つきにけり。げにや いのちほど。つれなきものは よもあらじ。とをき あつまの たびごろも。きつつや うらむる かひもなし。みやこにて 身のむかしを みちのくや。しのぶの山の しのふすり。●●(そで)にも うつしとゞめばや
と。みやぎのゝ こはぎは花の。むらずゝき。なびく けふりは しほがまの。やそしまかけて ちかのうらなみ。あさかの ぬまのかつみぐさ。おたへの はしや あふくまがはの。わたりして ゆきみのさとの ほどちかくし。はなかの さくら●(た)けくまの。まつのこだちも みきと きく。あこやのまへや あねはのまつ人ならば。みやこのたびに さそふべきと。よみしうたの まくらをせめて。ふで
みちのく=陸奥、「みちのおく」の音変化、今の福島・宮城・岩手・青森
みやこをは=みやこをばかすみとともにたちしかど秋風ぞふくしらかはのせき
後拾遺518能因法師
みやぎのゝ=宮城野、古くは野が広がり、萩(はぎ)の名所として知られた。[歌枕]
やそしま=八十島、多くの島々
ちかのうらなみ=千賀浦、千賀の塩竈、塩竈の浦
あさか=安積、福島県、郡山市を中心とする古くからの地名
おたへ= 緒絶の橋、宮城県古川市にある橋、[歌枕]
ゆきみのさと=たもとほり ゆきみのさとに いもをおきて こころそらにあり つちはふめども
万葉集2541
あこやのまへ=阿古屋の松、現在の山形県山形市、千歳山の松。
阿古耶姫と松の精にかかわる話や実方にまつわる話が伝わる[歌枕]
あねはのまつ=姉歯の松、宮城県栗原市金成姉歯(かんなりあねは)にあった松。
小野小町の姉または松浦佐用姫(まつらさよひめ)の姉の墓上に植えた五葉松という。[歌枕]
小町はとうとう、
陸奥に来ました。
歌枕巡りです。