小 町 草 帋
(・・・ひくは らくようの)世の中。一たびは さかへ。ひとたひは おとろふ。たえなる はなの ちりはてゝ。こけのしたに くちはつる。ありさまをみせ。よろつの こゝろに。まかせぬ ことのはを。そらゆく月の くもりなき。夜も しぐれのそらの。たちまよひてさはりと なれるをも。これにて ながめ。これに つけても。うたのすがた。人まるの うたに
ほの/\とあかしのうらのあさきりにしまかくれゆくふねをしそおもふ
と。ゑいじ給ひし うたも しゆじやうの ためなるあかしのうらとは。しゆじやうの まよひの 心なり。しまかくれゆくとは。三かいるてんの こゝろなり。ふね
一たびは さかへ。ひとたひは おとろふ。=一栄一落春秋、
春には花が咲き秋には葉が落ちるところから人が栄えたり衰えたりすること
人まる=人丸、柿本人麻呂
ほの/\と・・=ほのぼのと明るくなってゆく明石の浦の朝霧のなか、
島陰に姿を消してゆく舟を見ると、しみじみとした気分になります。古今序、409
しゆじやう=衆生、命ある者・心をもつ者の意、人間達
三かいるてん=三界流転、過去・現在・未来の3世の生死を繰り返すこと
どうやら小町の人生を通して、
人の生き方を教える、
有り難い話になりそうです。