編集後記_「ステッピンアウト!#15_名球会_広瀬叔功&土井正博」 | 吉里颯洋オフィシャルブログ 「微風爽々」

編集後記_「ステッピンアウト!#15_名球会_広瀬叔功&土井正博」

「STEPPIN’ OUT!(ステッピンアウト!)」誌にて好評連載中の「名球会、伝説の名選手たちの肖像」。

山崎二郎さんがインタヴュー&撮影を、私こと吉里爽が「1文字入魂」の気合いで(笑)構成を担当しています。さて、連載2回目にご登場いただいたのは、歴代2位の596盗塁を記録し、野村克也さんと共に南海ホークスの黄金期を牽引した韋駄天・広瀬叔功選手と、近鉄バファローズの「18歳の4番打者」として華々しくデビューし、465本塁打を放った土井正博さん。編集、執筆時に感じた印象、感慨をご紹介します。

 

まずは、あのノムさんに「野球の天才は2人しか知らない。長嶋(茂雄)と広瀬や」と言わしめ、「現代スピード野球の開祖」と呼ばれた天才プレイヤーの広瀬叔功さん。

その語り口はざっくばらんで気負いがありません。広島弁丸出しでユーモアを交えてお話いただいたエピソードはどれも秀逸。プロ入り時の評価に関して「俺なんかどうでもええ選手やった」みたいなことを幾度かおっしゃっているのですが、コーチや先輩の誰に教わるでもなく、自らの工夫と鍛錬の中から掴んだ盗塁術の一端をご紹介できたのは光栄の極みでした。インタビュアーの山崎二郎さんは草野球の世界で盗塁に命をかけている方なのですが、取材当時、83歳だった広瀬さんが実演する盗塁時のスタートの切り方を目の当たりにして心底驚嘆していました。「これぞ、達人の極意!」と山崎さんがうなったであろうことは想像に難くありません、さて、 広瀬さんの名言をあえてひとつ選ぶなら、見出しにもした以下のコメントです。

 

大事なのは、「ベースのどこに着くか?」ということ。捕手からの送球と野手が捕球する位置で、ベースのどっち側にタッチするかを一瞬で判断して決める

 

これを文字にした時、素人考えながら、「広瀬さんがもし、今のプロ野球界、パ・リーグに存在したなら、当然のごとく、ホークスの後輩である周東佑京選手(福岡ソフトバンクホークス)と盗塁王を争っていたはず」と確信したのでした。

 

 

 

シュアな打撃で、2157安打を記録した広瀬さんのバッティング・フォーム。

 

 

そして、もうお一方ご紹介するのは、「18歳の4番打者」として、球史にその名を刻んだ土井正博さん。かすかに記憶がある西武ライオンズ時代の土井さんは、戦国時代の猛将・後藤又兵衛か岩見重太郎がユニフォームを着てグラウンドに現れたかのような得も言われぬ迫力がありました。スマートな選手が多かった印象がある当時のセ・リーグの試合には存在しないタイプで、醸し出す雰囲気はまさに「豪傑」。ごっつい身体でバットのヘッドをピッチャー側に傾けた構えから、空気を切り裂くような豪快なフルスイングで飛ばす打球は、レフト側、レフト線のみ!「センター返し」なんて、小賢しいことはしないのです。ただ、そんな豪放磊落なイメージはあくまでファン目線が感じたイメージに過ぎません。まだ10代だった土井さんが球団(近鉄バファローズ)側の戦略で実現した「18歳の4番打者」という看板の重さに耐えかね、別当薫監督に「4番を降ろしてくれ」と直訴すると、別当監督は「甘ったれるな。使ってる俺の方がどれだけ悲しいか、どれだけ苦しいか、考えたことがあるんか!」とあっさり却下します。深い闇の中で光明を求めてあがく土井さんが別当監督や荒川博さんらの貴重なアドヴァイスをきっかけに打撃開眼していくプロセスはなかなかの読み応え。野球の世界に限りませんが、いつの世も偉人の人生を変えるのは偉人なんですね。

 

そして、今回の記事で特筆すべきは、コーチ時代の土井さんが、松井稼頭央、栗山巧、秋山翔吾ら、埼玉西武ライオンズの多くのスラッガーたちを育てた秘話を活字にできたこと。次々とスラッガーが育っていくライオンズならではの伝統、土壌がどうやって成り立っているのか、その謎がようやく解けました。ライオンズファンの自分も初めて知るエピソードでしたので、興味のある方はぜひチェックを!

 

 

そんな土井さんの「名言・オブ・名言」を一つ選ぶなら、見出しにもした以下の一言。

 

コーチの進言を受け入れてくれるような監督に僕は恵まれたし、使ってくれる監督に出会えたからこそ、選手たちも育ってくれたというね

 

少年時代にテレビで見ていた「豪傑スラッガー」という印象とは180度違う、「謙虚な打撃職人にして名伯楽」というのが土井さんの真の姿でした。

 

この「名球会、伝説の名選手たちの肖像」では、引き続き、日本球界のレジェンド・プレイヤーたちの濃密な野球人生のエッセンスをお伝えしていきます。「プロアマ問わず、野球に関わっている方、すべての野球ファンに読んでいただけたら」と切に願う次第です!

 

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