さりげないわざとらしさ -488ページ目

ベストフレンド

 「ススム、大丈夫だ。冷静になって考えるんだ。」ススムは自分の心に訴えかけた。
 どちらか一方を選ぶことというのは、簡単そうに見えて、実は一番難しい。しかも今回の状況は、よくドラマでありがちな「赤か青の銅線のどちらかを切る」といった子供じみた単純な選択ではないのだ。
もともとクールだと評判のススムも今回ばかりは動揺を隠せない。事情が事情だけに、他人の意見を聞く、というわけにはいかない。すべてを自分自身で判断しなければならないのだ。
ススムの脳裏にふと祖父の顔が浮かんだ。「そうか、あの人だったら迷うなんてことはなかったろう。」
ススムの祖父は、5年前に腰を痛め、亡くなった。祖父は、数十年前、その確固とした決断力を存分に発揮し、今やどの家庭にも普及した掃除機のコードの、「ここまでしか伸びない」というところに、黄色もしくは赤のテープを貼ることを考案した人物である。そのアイデアは全国主婦連から「大変助かる」、「引っ張りすぎてちぎれてしまう前の目安になってうれしい」といった意見が相次ぎ、彼のその往年のギャグ「掃除機言って」(正直言って)は、その年の流行語大賞となった。彼のその功績は当然明るみに出るところとなり、後に政財界においても大きな発言力をもつこととなる。更にその人気は国内のみならず海外までに至り、ついにはイギリスにおいてナイトの称号を得ることとなった。
そんな祖父をススムは常に尊敬し、祖父お得意のハニカンだ笑顔(元祖ハニカミ王子だ!)を鏡の前でよく真似をしたものだった。「久しぶりに真似てみるか。」そう思ったところでススムは現実にかえった。時計を見ると、あと残り数分しかない。ススムは頭を抱え、「頭よ、早く回転してくれ。早く判断を!」と祈った。
「ススムよ。」そのときだった。亡くなった祖父の声がどこからともなく聞こえてきたのだ。ススムは驚きよりも懐かしさを感じ、思わず「ジジ!」と子供のころの呼び方で叫んだ。「どこにいるんだい?」そう言ってあたりを見回してみるが、姿は一向に見えない。「き…気のせいか…」とがっかりと肩を落としていたところに、また声が。「ススム。何を迷っておる。掃除機言って(正直言って)答えはもうあるじゃろ。」あれは確かに、姿はないが、ジジの声、ジジのギャグだ。そう思ったとたん、ススムは体の緊張がみるみるうちにほぐれていくのを感じた。「そうだ。そうだね。ジジ。おれは前からこっちだったね。なれてるほうがいいんだね。」ススムはゆっくりと手を伸ばした。
もう迷いはない。ススムは履き慣れたそのブリーフを手にした。「トランクスはもう少しあとにしよう。」そう思ったススムの顔は晴れやかだった。純白のグンゼは、その笑顔をさりげなく、それでいてしっかりと明るく照らしていた。
ススム、35歳の晩秋であった。数年後彼はビル管理の仕事に就き、人生相談を利用することとなる。




モテるメーン

 女の子にモテたいって思うのはみんな普通のことだよね。だけど実際どうすればモテるの?どうすればあの娘が振り返ってくれるの?なーんて疑問、みんな持ってるよね。
ここでは、こうすれば必ずモテる!という秘訣を、女子高生の意見を参考にドドーンと紹介しちゃうぞ。
君もバッチリ参考にしてゴキゲンな女の子をゲッツ!!
 
まずは服装。やっぱ外見がイケてなきゃ、相手も振り向いてくれないよ。そこで、こんなアイテムをセレクト。
①股下40センチズボン
②ドデカダウンジャケット
③バスケット用のドデカゴツゴツ運動靴(NIKEは外せないよね)
④帽子(キャップ型)
⑤札入れ
⑥カマキリ眼型ドデカサングラス
⑦鎖
どれもめっちゃ重要で、はなわも言ってるけど、「モテる=不良」という理論に基づいてるの。つまりはー、やっぱダラシナイのがモテるってこと。
①なんかはまさにそれ。君も街で見かけるよね。簡単に言うと「ズリサゲズボン」。でもあれは単に普通のズボンをズリサゲている訳じゃないんだ。もともと股下が短くできているんだよね。「へえ~」かい?(笑) つまりズリサゲて見えるのは君の目の錯覚さ。惑わされちゃノーンノン。
②も同じく「ズリサゲ」みたいなものさ。2サイズくらいは大っきくなくっちゃ怒られちゃうぞ。色はできれば白。汚れが目立つなんてセコいこと考えるなよな。実は汚れてるのがまたモテるコツだったりするんだ。それから間違っても値段が高いものは買っちゃだめ。「ジーンズショップマルカワ」とか「カジュアルハウス306」とかで買うと、安い物が手に入るYO。
③はやっぱ「よりだらしなく」ってのが基本だから紐は結んじゃいけないよ。しかもユルユルではかなきゃ。えっ?それじゃコケちゃうって?いいじゃない。コケたらコケたで「チョッ」って言ってうつむきながら恥ずかしそうに立ち上がって道端にツバを吐けばオールオッケー。
④のキャップは前面に謎の漢字や記号が書かれていること。そして注意しなくちゃいけないのは、斜め上にずらして被ること。それが「ヤンチャさ」を演出するのさ。
⑤はこれも定番だけど、なぜか札入れを持ってたほうがいいよ。柄は黒に龍か蛇だね。蛇はお金も貯まるって言うしさ。
さらに札入れなのに小銭メインになってしまって「大膨らみ」ってのがイイね。
⑥は分かりやすくアーティストで言うなら「黒夢」かな。かなり悪いです、暗黒ドラキュラ的な夢見るよって感じの上目使いはお約束。間違っても「あっ!カマキリ!」なんて言われないように、常に強気でね。
⑦の鎖は、「おれは危険な男だ」ってことをアピールするためさ。「なんかあったらやるよ、おれは…」みたいなね。それに⑤の札入れと連結させれば落とす心配ノーンノン。

ここまで外見を完璧にした君は恐いものはないよ。でもさらに上を求めなくっちゃ。

次は髪型だよ。
言うまでもなくスポーツ刈りやヘルメット型はご法度。
イケてるのはやっぱり無造作ヘア。無造作といっても本物の寝癖じゃノーンノン。
あえて無造作を作るというのが大切なんだ。えっ?具体的にだって?漫画にあるようなびっくりヘアってところかな。つんつんに逆立たせるのがグー。もしくは博士風かな。白髪ボサボサもナウかもね。
あとは色。茶髪脱色系。ちなみにこれは君たちのお父さんの世代からの不良の定番だよ。君のお父さんも茶髪だったかも?ワクドキ♥ところで「長く不良やってます」っていうのを相手に分かってもらう方法知ってる?それは髪が伸びて根元が黒くなってるようにすることさ。それだけで少なくとも「あっ!この人は最低1ヶ月は不良やってる!」と思ってくれるんだ。

さてさてここまで来たらあとは内面的なことかな。

そこで次は趣味だよ。
まず外せないのは、音楽鑑賞だね。といっても、クラシックなんてノーンノン。
やっぱりラップ。音痴でもバレないし、なんとなく「イケてる」しね。日本語でのラップは多少間が抜けるけど、気にしないこと。できれば手近な目に入ったものを自由にラップにできるとゴッキゲンカッコイイよ。
やり方は韻を踏んで適当にリズムを作るのがコツ。
例えば、
「ウィンドウの外 おれは見つめる きみのクライング  気持ちはクライミング
 本当のこと それを確かめる きのうのタイミング 気分はトリミング」
ってね。意味なんてなくていいんだ。だって、それがイケているからね。

最後は言葉使い。
基本は「マジ メッチャ ヤバくね?」。返事は大体これで決まり。内容なんて関係ないんだ。
それから喋るときは、「カッタルイ感」を出すこと。口を開けて喋るのがもう既に「カッタルイ」から俺は舌の流れで喋っているんだという感じを出す。少し巻き舌でもいいよね。
本当は心の中じゃワクワクドキドキだけど、「とにかくすべてが面倒くさいんだ」という感じを醸し出すことが大事なんだ。

以上がモテる秘訣の基本中の基本ってとこかな。
あとは君がどれだけ道から外れていくか、ハメを外せるかでモテ度は更にUPするぞ。

グッドラックメーン!


「ボーイズ☆クラッシュ」11月号

「新婚さん、いらっしゃい!」における基本的な流れ

亭主:広島市南区から参りました田村丸善次郎38歳!

妻:妻ルル子32歳!

(会場失笑。)

三枝:しかしまあ奥さん、あんたボンレスハムかいな。ムチムチやないの。着ぐるみやで。それにくらべ旦那さんの細いこと…。
あんた奥さんの影かいな。なんだかかわいそうやな。モヤシやん。そんな控えめな旦那さん。どちらにお勤めで?

亭主:広島市にあります、株式会社ロングTシャツで営業をやっとります!

三枝:その体で営業かいな。やっていけんの?

亭主:ロングTシャツは軽いんじゃ。

三枝:ああ、なるほどなるほど。しかしまあ旦那さん、一体奥さんのどこに惚れたん?

亭主:おっぱい!

三枝:おっぱいて~。

亭主:巨乳じゃけん!

三枝:巨乳て、あんた太ってるだけやないの。

妻:ちがう!巨乳じゃ!

三枝:あんたが巨乳ならカバなんかみんな巨乳じゃ。で、お二人はどこで出会ったん?

亭主:会社の取引先だったんじゃ。気になる娘がおるのぉってずーっと思ってたんじゃ。

三枝:気になるって、奥さん太ってるから目立ってただけやろ。

亭主:まあそれもあるかもしれん。でも俺のタイプだったんじゃ。

三枝:あんたポチャリが好き。

亭主:うん、好き。

三枝:んまあヤラシイ顔して…。で、どうして付き合うことになったん?

亭主:ある日、またルルちゃんのとこへ営業へ行ったんじゃい。でどーしても話とうなって、帰ったフリしてルルちゃんが便所に行くまでじーっと廊下の隅で隠れてまっとったんじゃい。

三枝:ほぅ、隠れとったんかいな。で奥さん来たん?

亭主:来た。こらチャンスやと思ってルルちゃんの前にバッ!と飛び出したんじゃい。

三枝:そら奥さん驚いたやろ~。

妻:うん、驚いた。びっくりしておしっこ漏れるかと思った。

三枝:そらそうやで。で結局どうなったん?

妻:せっかくやけ、その日は金曜やったし、そのまま飲み行こうかってなって。

三枝:で飲み行ったん。

亭主、妻:行った。

三枝:でしばらく飲んだんやな。

妻:うん、だいぶ飲んだ。

亭主:ルルちゃん相当酒飲むけん、しばらくしてわしつぶれてしまったんじゃい。

三枝:はー、そりゃ飲むやろなあ。旦那さん勝ち目ないわ。で寝てしもうたんかいな?

亭主:そうや。で、気がついたらなぜかホテルにおったんじゃ。

三枝:えっ?いきなりかいな。どうやって行ったんじゃ?まさか奥さんおぶったん?

妻:うんおぶった。

三枝:(ドテッ!)はあ…、さっすがやねえ。でその後どうしたん?

妻:部屋ついてから叩き起こしたんじゃ。

三枝:えっ?このモヤシを?…かわいそうに。

亭主:わしゃもうびっくりして一気に目が覚めたんじゃ。そしたらルルちゃん裸やし。

三枝:裸!?まあ随分積極的やねえ。でどうしたん?

妻:やった。

三枝:(ドテッ!と転び、靴を投げ、飾りのボールを投げつける。)
   だれか代わってえな。

山瀬:(大笑い)