四人の高校生

四人の高校生

白井一成、赤山秀和、金田宏美、黒柳哲夫…とある高校の四人の気持ちが交差する物語

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4月7日 曇り
駅はサラリーマンや学生でごった返していた。真新しいスーツに身を包んだ新入社員や、ピカピカの制服を着た新入生の姿もあった。
『あぁ、もう春休みも終わっちゃうのかぁ…』と思いながら、一成はおおきなあくびをして、電車に乗り込んだ。学校に近づくにつれて、春休みボケしたあたまとカラダが徐々に現実へと引き戻されていく。


例年より早めに咲き始めた桜は、満開を過ぎてもうずいぶん散ってしまっている。
校門の横の桜の木からも、花びらがひらひらと絶えず舞い落ちてきては、薄桃色の絨毯を作っている。今にも雨粒が落ちてきそうな真っ黒な雲とのくっきりとしたコントラストが目に焼きついた。

今日は始業式だ。といっても始業式なんてイベントは一成にとっては全くどうでもよかった。
今日のメインイベントはクラス替えの発表、それ以外にはない。一成の通う高校では、1年生と2年生の間ではクラス替えが行われるが、2年生と3年生の間ではクラス替えがないため、このクラス替えに、のこり2年間の高校生活すべてがかかっているのだ。
春休みが終わってしまうという気だるさと、新しいクラスがどんなメンバーなんだろうかという緊張感が入り混じっていた。

校舎のわきにはもうすっかり人だかりができていて、新しいクラスのメンバーや担任のことでとにかく盛り上がっているようだった。
人だかりに向かって歩いて行くと、人だかりの中から一人抜け出してきた秀和が話しかけてきた。

「一成、おはよう。F組だったよ。俺も一緒。」
「おっす、まじ?また秀和と同じクラス?」
「そうみたい。担任は英語の高崎だってさー。」
と言いながら、秀和がクラス分けの書かれた紙を差し出してきた。

「また同じクラスとかすげぇな。秀和ってもしかして…俺の運命の人なんじゃ…(笑)」
「やめろよ、気持ち悪いだろ(笑)」
なんて冗談を言い合いながら教室へ向かった。


白戸一成と赤井秀和は幼馴染で、小学校のときからの友達同士だ。中学校でも3年間同じクラス、高校1年生の時も同じクラスだった。そして今年と来年も同じクラスになることが、確定したのだ。真面目で勉強熱心な秀和と同じ県立高校に合格したのは、一成にとっては奇跡的な出来事だった。一成にとって秀和はなんでも言い合える本当の親友と呼べる存在だ。だから、秀和がまた同じクラスだとわかると、新学年の新学期特有の緊張感が、氷のようにすっと音もなく溶けていくのを感じた。



教室は2階、中央階段を上がってから左に曲がって2番目の部屋だ。
教室へはいると、もうすでに4,5人ずつの女子の集まりが出来ていて、「はじめまして」「よろしく」と、いつも通りの自己紹介がなされていた。
新しいクラスの教室のかべは、掲示物がすべて取り外されている。黒板の上に時計が一つかかっているだけでなんだか無個性だ。黒板には、出席番号順に着席すること、とだけ書かれている。

朝の気だるさが嘘のように、期待に胸をふくらませて一成は教室を見回していた。すると突然うしろから声をかけられた。

「白戸君、赤井君、おはよう。今年もまた同じクラスだね。よろしくー!」

振り向いてみると、宏美だった。
といってもこの時は、まだ宏美なんて呼び捨てにはできず、金田さんと呼ぶくらいの間柄だった。金田宏美と白戸一成と赤井秀和の3人は1年生の時も同じクラスだったのだが、その時は全くと言ってよいほど関わりがなかったのだ。

「あ、金田さん…だよね?よろしく」
と一成が言うと、秀和も
「こちらこそ、よろしくお願いします…」
と、緊張しながらぎこちなく続けた。

「第二中の人に聞いたんだけど、二人って中学の時からずっと同じクラスなんでしょ?
すごいね、もしかして…付き合ってるの?(笑)」
と、宏美がからかうように微笑みかけてきた。

一成が秀和のほうをチラッと見てから、
「まあな(笑)」と返すと、3人は緊張感という、つっかえ棒が外れたように声を出して笑った。

「去年G組だったの、このクラスに私たち3人だけみたいだよ。だからよろしく!」
ともう一度、一成と秀和にあいつすると、女子の群れの中に混ざっていった。
確かに、宏美の言うとおり教室を見回すと、新しいクラスのメンバーに去年G組だった人は白戸一成と赤井秀和と金田宏美以外にはいないみたいだ。

「去年G組だった40人を新しい8クラスに分けるとしたら、本当なら5人はこのクラスに元G組の人がいてもおかしくないのに、たった3人だけなんだな。」
なんて秀和がまた分析的していた。



8時半になって担任の高崎先生がやってきて挨拶をした。どんな話をしていたのか、あまり覚えていないが、おそらく「楽しいクラスにしましょう」とかそんな当たり障りのないことを言っていたのだろうか。

出席番号順に着席すると、秀和は、赤井の『あ』で出席番号が1番なので廊下側の一番前の席。『し』の一成は真ん中よりも少し窓側の席。『か』の宏美は出席番号がちょうど真ん中の20番でほぼ教室のど真ん中の席だった。
そして、宏美の隣の席になったのが、出席番号が21番『く』の黒柳哲夫だった。