今回のLink MEは、先週の円ドルレート[136][139]に基づき、月末週末日次データを用いて20246月の円ドルレートの変動と原因について検討し、月次月末値の変化を日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき解説します。

 

 グラフには2024531()から2024628()までの月末週末日次データ青の折れ線で記載されています。縦軸の円ドルレートの数値()方向へ行くほど小さ(大き)くなるように、言い換えると円高・ドル安(円安・ドル高)になるように、描かれています。2024531()の円ドルレートは1ドル=157.14628()160.92なので、月末値の変化で見ると、202461ヶ月間の円ドルレートの変動3.78の円安・ドル高であったことが、グラフから読み取れます。

 

 

 202467()が前月末比1. 73円高・ドル安となった一方で、14()21()28()前週末比各2. 251.102.16円安・ドル高となったことが、グラフから読み取れます。その結果、20245月末終値531()157.14と比べると20246月第最終取引日628()3.78円安・ドル高となりました。

 

 途中の行き過ぎた円高・ドル安や円安・ドル高に戻ったものを除外し、2024531()157.14からスタートして628()160.923.78円の円安・ドル高を推し進めた週末日を取り出した、薄茶色傾向線もグラフに描かれています。2024531()157.14から628() 160.92までの変動範囲の中で、2024531() 157.14より円安・ドル高となる週末取引日を日付順に探すと、2024614()157.6621()158.76が該当することを、グラフより読み取れます。したがって、2024531()157.14614()157.6621()158.7620246月取引最終日である628()160.92を結ぶグラフが傾向線となります。

 

 202455週最終取引日531()157.14から、いわば一直線2024628()160.923.78円安・ドル高となったと想定したのが、傾向線です。

 

 20246月の円ドルレートは、第2週は大幅な円高・ドル安でスタートしますが、一転して第3週と第4週は2週連続で第2週の大幅な円高・ドル安をくつがえす円安・ドル高の展開、最終第5週も引き続き再び大幅な円安・ドル高の展開となり、最終的には202455531()157.14を3.78円大きく下回る、米景気減速に基づく米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待への高まりを通じた第2週の大幅な円高・ドル安圧力が、5月米雇用統計結果・欧州議会選での右派躍進・日銀金融政策決定会合における金融政策正常化への遅れがもたらした日米金利差拡大に基づく第3週の円安・ドル高の勢いによって跳ね返され、以後第4・5週における米経済指標や米連邦準備理事会(FRB)高官発言により揺れる米利下げ動向等を通じて一貫した円安・ドル高が支配した一コブ型循環的変動となりました。このような傾向線の背後にある3.78円安・ドル高原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき検討すると、以下のようになります。

 

 第1は、欧州議会選で極右を含む右派躍進した結果を受け、マクロン大統領国民議会(下院)解散選挙の実施を発表したので、選挙による政治リスク財政悪化の懸念によるフランス国債売りが出たのを始めとしてユーロ圏国債利回り上昇したのに加え、FRBによる利下げ開始が遅れるとの見方も米金利上昇圧力となり、米長期金利が4.47%と前週末と比べ0.04%上昇し、日米金利差拡大を意識した円売り・ドル買いが出たことです。

 

 第2は、日銀金融政策決定会合における追加利上げの見送りと次回7月会合での市場参加者の意見確認も踏まえた今後1〜2年程度の具体的な国債買い入れ減額方針策定を受け、市場では買い入れ減額方針は想定内との見方が多く。減額が先送りされたとして当面は日本の低金利環境下で日米金利差が開いた状態が続くとの見方を通じて、円売り・ドル買いが膨らんだことです。

 

 第3は、ブロック豪準備銀行(中央銀行)総裁が理事会後の記者会見で「利上げを理事会で議論した」と明らかにしたのを受け、豪金利先高観に基づき豪ドルに対して円が売られた流れが対ドルにも波及し円売り圧力となったことです。

 

 第4は、事業会社の決済が集中しやすい「510(ごとおび)」だったので、輸入企業など実需勢によるドル調達が活発化したとの見方に基づき円安・ドル高が進行したことです。

 

 第5は、スイス国立銀行(中央銀行)政策金利を1.50%より1.25%へ引き下げると発表したのを受け、市場では政策金利を据え置くとの予想が多かったので利下げは想定外とみた投資家のスイスフラン売りが優勢になり、対スイスフランでドル買いの勢いが増すと対円にもドル買いが波及したことです。

 

 第6は、複数のFRB高官利下げを急がない姿勢を最近になって示しており、早期の利下げ観測が後退したとの見方に基づき米長期金利が上昇し、日米金利差拡大を意識した円売り・ドル買いが優勢だったことです。

 

 第7は、米財務省が半期ごとの外国為替政策報告書を公表し日本を1年ぶりに「監視リスト」に組み込んだのを受け、日本政府・日銀円買い介入が難しくなるとの思惑も円相場重荷となったことです。

 

 第8は、フィラデルフィア連銀が発表した6月製造業景況指数では「支払価格」や「販売価格」の項目の前月比での上昇や6月米購買担当者景気指数(PMI)速報値が2年2カ月ぶりの高水準になった米企業の景況感の改善を受けて米景気の底堅さが意識され、日米金利差が大きく開いた状態が続くとの根強い見方に基づく、円売り・ドル買いが優勢だったことです。

 

 第9は、160円台の歴史的な円安水準が迫ったのを受け、国内輸出企業が様子見姿勢により円買いを控えるなか、国内輸入企業ドル資金調達が優勢だったとの見方が円相場下押ししたことです。

 

 第10は、米国以外の国でのインフレ高止まりを背景に、ドル以外の通貨に対する円安が進んでいるのも円相場下押ししたことです。

 

 第11は、財務省神田真人財務官の後任に三村淳国際局長を充てる人事を発表したので、円買い為替介入の指揮をとってきた神田財務官退任により、円売りが出たことです。

 

 第12は、米国でバイデン大統領トランプ前大統領によるテレビ討論会が開かれ、米CNNテレビの緊急世論調査によると「トランプ氏勝利」と回答した割合が67%とバイデン氏(33%)を上回ったので、トランプ氏の政策によってインフレが再燃すれば米利下げ開始が遅れ、日米の政策金利差が大きく開いた状態が続くとの見方に基づき円売り・ドル買いが優勢となったことです。