今回のLink MEは特別編として経済コラム「先週の円ドルレート」を掲載します。日末値変化で見た2024年6月第4週最終取引日6月21日(金)から6月第5週最終取引日6月28日(金)の円ドルレート変動の原因を、東京外国為替市場の日次データを用い、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき解説します。
日次とは、1日ごとのデータであることをそれぞれ意味しています。東京外国為替市場の日次データは、午後5時の取引終了時点での円ドルレート終値となります。円ドルレート終値は、1ドル=123.35円~123.45円のように幅で表示されます。幅ではなく1つの数字で表示する場合は、1ドル= 123.35円と小さい数値、円高・ドル安の数値が使用されます。
グラフには2024年6月21日(金)~6月28日(金)までの日次データが青の折れ線で記載されています。縦軸の円ドルレートの数値が北(南)方向へ行くほど小さ(大き)くなるように、言い換えると円高・ドル安(円安・ドル高)になるように、描かれています。2024年6月21日(金)の円ドルレートは1ドル=158.76円、6月28日(金)160.92円なので、2024年6月21日(金)~6月28日(金)1週間の円ドルレートの変動は2.16円の円安・ドル高であったことが、グラフから読み取れます。
2024年6月24日(月)・26日(水)・27日(木)・28日(金)が前週末比並びに前日比各0.92、0.41、0.65、0.38円の円安・ドル高となった一方で、25日(火)は前日比0.20円の円高・ドル安となったことが、グラフから読み取れます。その結果、2024年先月末5月31日(金)終値157.14円と比べると、2024年6月第5週最終取引日6月28日(金)は3.78円の円安・ドル高となりました。
途中の行き過ぎた円高・ドル安や円安・ドル高に戻った日を以下のように除外して、傾向線を求めます。2024年6月21日(金)158.76円から6月28日(金) 160.92円までの変動範囲の中で、2024年6月21日(金)158.76円より円安・ドル高となる最初の取引日、次にその日より円安・ドル高となる日、6月28日(金) 160.92円までそのような手順を繰り返すと、6月24日(月)159.68円、26日(水)159.89円、27日(木)160.54円が該当することを、グラフより読み取れます。したがって、2024年6月21日(金)158.76円、24日(月)159.68円、26日(水)159.89円、27日(木)160.54円と2024年6月第5週最終取引日である28日(金) 160.92円を結ぶ薄茶色のグラフが傾向線となります。
2024年6月第4週最終取引日6月21日(金)158.76円から、いわば一直線で6月第5週最終取引日である6月28日(金)に2.16円の円安・ドル高となったと想定したのが、傾向線です。
2024年6月第5週の円ドルレートは、週明け後円安・ドル高でスタートし、翌日円高・ドル安へ転換、しかしその後は2日間連続で再び円安・ドル高へ回帰、取引最終日にも引き続き円安・ドル高の持続、米景気の底型さ・米連邦準備理事会高官の利下げ慎重発言・国内輸出入企業の実需動向・米現前大統領によるテレビ討論会結果などを通じて円安・ドル高が支配した、最終的にはスタート時点の円ドルレートを2.16円下回る大幅な円安・ドル高で終わる、軽微な循環的変動となりました。このような傾向線の背後にある2.16円の円安・ドル高の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき検討すると、以下のようになります。
第1は、6月米購買担当者景気指数(PMI)速報値が2年2カ月ぶりの高水準になった米企業の景況感の改善を受けて米景気の底堅さが意識され、日米金利差が大きく開いた状態が続くとの根強い見方に基づく、円売り・ドル買いが優勢だったことです。
第2は、ボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事は講演で「政策金利の引き下げが適切だという段階にはない」との見解を述べ、インフレ動向によっては利上げに動く用意があ
るとの姿勢を背景に米長期金利が上昇し、日米金利差を意識した円売り・ドル買いが優勢だったことです。
第3は、160円台の歴史的な円安水準が迫ったのを受け、国内輸出企業が様子見姿勢により円買いを控えるなか、国内輸入企業のドル資金調達が優勢だったとの見方が円相場を下押ししたことです。
第4は、複数のFRB高官が利下げを急がない姿勢を最近になって示しており、早期の利下げ観測が後退したとの見方に基づき米長期金利が上昇し、日米金利差拡大を意識した円売り・ドル買いが優勢だったことです。
第5は、米国以外の国でのインフレ高止まりを背景に、ドル以外の通貨に対する円安が進んでいるのも円相場を下押ししたことです。
第6は、28日は事業会社の決済が集中しやすい月内最終営業日にあたり、利上げなどによる実需の円売り・ドル買いが出たとの観測が、円相場の重荷となったことです。
第7は、財務省は神田真人財務官の後任に三村淳国際局長を充てる人事を発表したので、円買い為替介入の指揮をとってきた神田財務官の退任により、円売りが出たことです。
第8は、米国でバイデン大統領とトランプ前大統領によるテレビ討論会が開かれ、米CNNテレビの緊急世論調査によると「トランプ氏が勝利」と回答した割合が67%とバイデン氏(33%)を上回ったので、トランプ氏の政策によってインフレが再燃すれば米利下げ開始が遅れ、日米の政策金利差が大きく開いた状態が続くとの見方に基づき円売り・ドル買いが優勢となったことです。