今回のLink MEは特別編として経済コラム「先週の円ドルレート」を掲載します。日末値変化で見た20246月第3週最終取引日614()から6月第4週最終取引日621()の円ドルレート変動の原因を、東京外国為替市場の日次データを用い、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき解説します。

 

 日次とは、1ごとのデータであることをそれぞれ意味しています。東京外国為替市場日次データは、午後5時の取引終了時点での円ドルレート終値となります。円ドルレート終値は、1ドル=123.35円~123.45のようにで表示されます。幅ではなく1つの数字で表示する場合は、1ドル= 123.35円と小さい数値円高・ドル安の数値が使用されます。

 

 グラフには2024614()621()までの日次データ青の折れ線で記載されています。縦軸の円ドルレートの数値()方向へ行くほど小さ(大き)くなるように、言い換えると円高・ドル安(円安・ドル高)になるように、描かれています。2024614()の円ドルレートは1ドル=157.66621()158.76なので、2024614()621()1週間の円ドルレートの変動1.10円安・ドルであったことが、グラフから読み取れます。

 

 

 2024617()19()前週末比並びに前日比各0.110.39円高・ドル安となった一方で、18() 20()21()前日比各0.580.530.49円安・ドル高となったことが、グラフから読み取れます。その結果、2024年先月末531()終値157.14と比べると20246月第4週最終取引日621()1.62円安・ドル高となりました。

 

 途中の行き過ぎた円高・ドル安や円安・ドル高に戻った日を以下のように除外して、傾向線を求めます。2024614()157.66から621()158.76までの変動範囲の中で、2024614()157.66より円安・ドル高となる最初の取引日次にその日より円安・ドル高となる日621()158.76までそのような手順を繰り返すと、618()158.1320()158.27が該当することを、グラフより読み取れます。したがって、2024614()157.6618()158.1320() 158.2720246月第4週最終取引日である21() 158.76円を結ぶ薄茶色のグラフ傾向線となります。

 

 202463週最終取引日614()157.66から、いわば一直線6月第4週最終取引日である621()1.10円安・ドル高となったと想定したのが、傾向線です。

 

 20246月第4週の円ドルレートは、週明け後小幅な円高・ドル安でスタートし、その後円安・ドル高へ転換、しかし翌日には再び円高・ドル安へ回帰、さらにまた再度の円安・ドル高への揺り戻し、取引最終日にも引き続き円安・ドル高の持続、米経済指標や米連邦準備理事会(FRB)高官発言により揺れる米利下げ動向に豪準備銀行とスイス国立銀行の金融政策が及ぼす影響も加わり円高・ドル安円安・ドル高が交互しましたが、最終的にはスタート時点の円ドルレートを1.10円下回る円安・ドル高で終わる、目まぐるしい循環的変動となりました。このような傾向線の背後にある1.10円安・ドル高原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき検討すると、以下のようになります。

 

 第1は、ブロック豪準備銀行(中央銀行)総裁が理事会後の記者会見で「利上げを理事会で議論した」と明らかにしたのを受け、豪金利先高観に基づき豪ドルに対して円が売られた流れが対ドルにも波及し円売り圧力となったことです。

 

 第2は、20日は事業会社の決済が集中しやすい「510(ごとおび)」だったので、輸入企業など実需勢によるドル調達が活発化したとの見方に基づき円安・ドル高が進行したことです。

 

 第3は、スイス国立銀行(中央銀行)政策金利を1.50%より1.25%へ引き下げると発表したのを受け、市場では政策金利を据え置くとの予想が多かったので利下げは想定外とみた投資家のスイスフラン売りが優勢になり、対スイスフランでドル買いの勢いが増すと対円にもドル買いが波及したことです。

 

 第4は、カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁は物価上昇率がFRBインフレ目標である2%に落ち着くまでは「1~2年かかる可能性がある」と述べたのに加え、フィラデルフィア連銀が発表した6月製造業景況指数では「支払価格」や「販売価格」の項目が前月と比べ上昇したので、インフレの高止まりが意識されて米国債が売られ米長期金利が上昇して、日米金利差を背景とした円売り・ドル買いを後押ししたことです。

 

 第5は、米財務省が半期ごとの外国為替政策報告書を公表し日本を1年ぶりに「監視リスト」に組み込んだのを受け、日本政府・日銀円買い介入が難しくなるとの思惑も円相場重荷となったことです。