今回のLink MEは特別編として経済コラム「先月の円ドルレート[51] 20245」に引き続き、月末値変化で見た20245月の円ドルレート変動の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事と「為替レート決定の仕組み 」で説明した利子(金利)裁定式、に基づき解説します。

 

 20245月の円ドルレートは、第1週は大幅な円高・ドル安でスタートしますが、一転して第2週から第4週は3週連続で円安・ドル高の展開、最終第5週も引き続き円安・ドル高となり、最終的には202445430()156.85をわずか0.29下回る、第1週の政府・日銀による円買い介入等に基づく大幅な円高・ドル安圧力を跳ね返す、複数の米連邦準備理事会(FRB)高官米利下げ転換に対する慎重発言等を通じた円安・ドル高の勢いが、第2週以後一貫して支配した循環的変動となったことが、「先月の円ドルレート[51] 20245」のグラフより読み取れます。

 

為替レート決定の仕組み 」で説明した、利子裁定式ii*=(πeπ)/πを予想為替レート(πe)について解いたπeπ(1+ii*)を使って、2024430()2024531()予想為替レートを求めてみます。利子率(金利)データ日米10年物国債利子率を使用します(時差を考慮し米利子率は前日データ)。

 

 2024430()円ドルレート終値156.85円利子率0.870%米利子率4.620%を上式に当てはめると、予想為替レート150.97となります。同様に2024年531()円ドルレート終値157.14円利子率1.070%米利子率4.547%を上式に当てはめると、予想為替レート151.68となります。2024430()から2024531()にかけての予想為替レート変化0.71円の円安・ドル高、他方両日日米利子率格差はそれぞれ、3.750%3.477%日米利子率格差変化(Δ(ii*) ) 0.273%縮小となります。

 

 これらの値を以下の計算式に当てはめると、予想為替レートの変化(Δπe)0.71円の円安・ドル高が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円安・ドル高効果は0.74、他方日米利子率格差変化(Δ(ii*)0.273%縮小が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円高・ドル安効果は0.44円、0.29(現実為替レートの変化) 0.74円-0.44が得られます。円ドルレート予想円安・ドル高方向へ作用した一方で、日米利子率格差縮小円高・ドル安圧力を及ぼしましたが、円ドルレート予想円安・ドル高の勢いが日米利子率格差縮小のそれを上回ったことになります。

 

先月の円ドルレート[51] 20245」のグラフで描かれる傾向線の動きは、利子裁定式の考え方に従えば、日米利子率格差縮小による円高・ドル安圧力を上回る円安・ドル高レート予想に基づく円安・ドル高のそれによって説明できます。傾向線の動きを循環的に円安・ドル高方向へ推移させたのは、2024545円安・ドル高であることが、「先月の円ドルレート[51] 20245」のグラフより読み取れます。したがって、2024545日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事より、円安・ドル高レート予想の原因を特定できます。

 

 日米利子率格差縮小による円高・ドル安圧力を上回る円安・ドル高レート予想に基づく円安・ドル高圧力原因は、日銀金融政策正常化が意識されたのを受け円利子率上昇傾向にあった一方で、米利子率FRB高官米利下げ転換に対する慎重発言や米景気指標を反映して上下動を頻繁に繰り返した結果FRB利下げ転換が確定的とならなかったことです。傾向的には日米利子率格差縮小により円高・ドル安圧力がもたらされましたが、頻繁な米利子率上下動に伴いFRB利下げ転換が確定的とならなかったのを背景に、予想為替レートは日米利子率格差縮小に基づく円高・ドル安圧力を上回る円安・ドル高方向に振れざるをえなくなったという次第です。