今回のLink MEは特別編として経済コラム「先週の円ドルレート」を掲載します。日末値変化で見た2024年5月第3週最終取引日5月17日(金)から5月第4週最終取引日5月24日(金)の円ドルレート変動の原因を、東京外国為替市場の日次データを用い、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき解説します。
日次とは、1日ごとのデータであることをそれぞれ意味しています。東京外国為替市場の日次データは、午後5時の取引終了時点での円ドルレート終値となります。円ドルレート終値は、1ドル=123.35円~123.45円のように幅で表示されます。幅ではなく1つの数字で表示する場合は、1ドル= 123.35円と小さい数値、円高・ドル安の数値が使用されます。
グラフには2024年5月17日(金)~5月24日(金)までの日次データが青の折れ線で記載されています。縦軸の円ドルレートの数値が北(南)方向へ行くほど小さ(大き)くなるように、言い換えると円高・ドル安(円安・ドル高)になるように、描かれています。2024年5月17日(金)の円ドルレートは1ドル=155.81円、5月24日(金)157.04円なので、2024年5月17日(金)~5月24日(金)1週間の円ドルレートの変動は1.23円の円安・ドル高であったことが、グラフから読み取れます。
2024年5月20日(月)が前週末比0.08円の円高・ドル安となった一方で、21日(火)・22日(水)・23日(木)・24日(金)は4日間連続で前日比各0.14、0.40、0.09、0.06円の円安・ドル高となったことが、グラフから読み取れます。その結果、2024年先月末4月30日(火)終値156.85円と比べると、2024年5月第4週最終取引日5月24日(金)は0.19円の円安・ドル高となりました。
途中の行き過ぎた円高・ドル安や円安・ドル高に戻った日を以下のように除外して、傾向線を求めます。2024年5月17日(金)155.81円から5月24日(金)157.04円までの変動範囲の中で、2024年5月17日(金)155.81円より円安・ドル高となる最初の取引日、次にその日より円安・ドル高となる日、5月24日(金)157.04円までそのような手順を繰り返すと、21日(火)156.22円、22日(水)156.40円、23日(木) 156.67円が該当することを、グラフより読み取れます。したがって、2024年5月17日(金)155.81円、21日(火) 156.22円、22日(水)156.40円、23日(木)156.67円と2024年5月第4週最終取引日である24日(金)157.04円を結ぶ薄茶色のグラフが傾向線となります。
2024年5月第3週最終取引日5月17日(金)155.81円から、いわば一直線で5月第4週最終取引日である5月24日(金)に1.23円の円安・ドル高となったと想定したのが、傾向線です。
2024年5月第4週の円ドルレートは、週明け後小幅な円高・ドル安でスタートし、その後3日間連続で円安・ドル高の揺り戻しが進行、取引最終日にも引き続き円安・ドル高が持続、米連邦準備理事会(FRB)利下げ転換の遅れを示唆するFRB高官発言・米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨・経済指標や日銀の国債購入額据え置きなどが支配的となり、円安・ドル高圧力が円高・ドル安の勢いを圧倒し、最終的にはスタート時点の円ドルレートを1.23円下回る円安・ドル高で終わる、軽微な循環的変動となりました。このような傾向線の背後にある1.23円の円安・ドル高の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき検討すると、以下のようになります。
第1は、米連邦準備理事会(FRB)のバー副議長が講演で制限的な政策金利水準をさらに長く続ける必要があると述べたほか、アトランタ連銀のボスティック総裁やクリーブランド連銀のメスター総裁も米ブルームバーグテレビの番組でインフレ率が目標の2%へ向けた軌道に乗っていると確信するには時間がかかるとの見方を示すなど、FRB高官より利下げ転換に慎重な発言が相次ぎ、市場で再燃していた利下げ観測が和らいだのを受け米長期金利が上昇して、日米金利差拡大を見込む円売り・ドル買いが優勢だったことです。
第2は、国内輸入企業など実需筋によるドル調達に基づく円売り・ドル買い観測もあったことです。
第3は、FRBが公表した4月30日〜5月1日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、参加者が現在の米政策金利を維持する可能性を示唆していたとわかり、米利下げ観測が後退したのを受け米長期金利が上昇し、円売り・ドル買いが進んだことです。
第4は、日銀が定例の国債買い入れオペ(公開市場操作)では残存期間「5〜10年」など3本すべての購入予定額を据え置いたので、日銀が高水準の国債購入を続けるとの見方に基づき円売り・ドル買いが優勢になったことです。
第5は、週間米新規失業保険申請件数が市場予想を下回り、米S&Pグローバルが公表した5月米購買担当者景気指数(PMI)速報値では製造業とサービス業で景況感がともに改善した、米景気の底堅さがインフレ沈静化を遅らせFRBは利下げに慎重になるとの見方が一段と強まったのを受け米長期金利が上昇し、日米金利差拡大を見込んだ円売り・ドル買いを促したことです。