今回のLink MEは特別編として経済コラム「先月の円ドルレート[41] 20244」に引き続き、月末値変化で見た20244月の円ドルレート変動の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事と「為替レート決定の仕組み 」で説明した利子(金利)裁定式、に基づき解説します。

 

 20244月の円ドルレートは、第1週は3月第5週最終取引日円ドルレートと横ばいでスタートし、第2週から第4週は 3週連続で円安・ドル高の展開、最終第5週も引き続き円安・ドル高となり、最終的には202435329() 151.33を5.52円下回る、円安・ドル高の勢いが第2週以後一貫して支配した単調的変動となったことが、「先月の円ドルレート[41] 20244」のグラフより読み取れます。

 

為替レート決定の仕組み 」で説明した、利子裁定式ii*=(πeπ)/πを予想為替レート(πe)について解いたπeπ(1+ii*)を使って、2024329()2024430()予想為替レートを求めてみます。利子率(金利)データ日米10年物国債利子率を使用します(時差を考慮し米利子率は前日データ)。

 

 2024329()円ドルレート終値151.33円利子率0.725%米利子率4. 201%を上式に当てはめると、予想為替レート146.07となります。同様に2024430()円ドルレート終値156.85円利子率0.870 %米利子率4.620%を上式に当てはめると、予想為替レート150.97となります。2024329()から2024430()にかけての予想為替レート変化4.90円の円安・ドル高、他方両日日米利子率格差はそれぞれ、

3.476%3.750%日米利子率格差変化(Δ(ii*) ) 0.274%拡大となります。

 

 これらの値を以下の計算式に当てはめると、予想為替レートの変化(Δπe)4.90円の円安・ドル高が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円安・ドル高効果は5.09、他方日米利子率格差変化(Δ(ii*)0.274%拡大が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円安・ドル高効果は0.45円、5.52(現実為替レートの変化) 5.09+ 0.45が得られます。円ドルレート予想日米利子率格差の拡大は、どちらも円安・ドル高方向へ作用したことになります。

 

 

先月の円ドルレート[41] 20244」のグラフで描かれる現実の円ドルレートと一致する傾向線の動きは、利子裁定式の考え方に従えば、円安・ドル高レート予想日米利子率格差の拡大がもたらした円安・ドル高圧力によって説明できます。現実の円ドルレートと一致する傾向線の動きは、第1週の前週末円ドルレート横ばいだったのを除き、一貫して円安・ドル高の流れであったことが、「先月の円ドルレート[41] 20244」のグラフより読み取れます。したがって、2024425日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事より、円安・ドル高レート予想日米利子率格差拡大の原因を特定できます。

 

 日米利子率格差拡大の原因は、根強い米インフレ圧力を背景とした米長期金利上昇です。米長期金利上昇を引き起こした原因は、3月米雇用統計における非農業部門雇用者数増加、市場予想を上回った3月米消費者物価指数(CPI)上昇率、市場予想を下回った週間新規失業保険申請件数、イランとイスラエル間の中東情勢緊張の高まり、市場予想を大幅に上回った3月米小売売上高増加率米実質国内総生産(GDP)米個人消費支出(PCE)物価指数発表を控えた米国債持ち高調整の売りなどです。

 

 円安・ドル高予想為替レート変化の原因は、上述の米長期金利上昇に伴う米金利先高観欧州中央銀行(ECB)利下げ観測の強まり、国内輸入企業による円売り・ドル買い観測、日本株買いによるリスクオン円売り・ドル買い、日本の通貨当局者の円安けん制姿勢、日銀金融政策決定会合における金融緩和継続の決定に求められます。