今回のLink MEは特別編として経済コラム「先週の円ドルレート」を掲載します。日末値変化で見た2024年2月第1週最終取引日2月2日(金)から2月第2週最終取引日2月9日(金)の円ドルレート変動の原因を、東京外国為替市場の日次データを用い、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき解説します。
日次とは、1日ごとのデータであることをそれぞれ意味しています。東京外国為替市場の日次データは、午後5時の取引終了時点での円ドルレート終値となります。円ドルレート終値は、1ドル=123.35円~123.45円のように幅で表示されます。幅ではなく1つの数字で表示する場合は、1ドル= 123.35円と小さい数値、円高・ドル安の数値が使用されます。
グラフには2024年2月2日(金)~2月9日(金)までの日次データが青の折れ線で記載されています。縦軸の円ドルレートの数値が北(南)方向へ行くほど小さ(大き)くなるように、言い換えると円高・ドル安(円安・ドル高)になるように、描かれています。2024年2月2日(金)の円ドルレートは1ドル=146.22円、2月9日(金)149.39円なので、2024年2月2日(金)~2月9日(金)1週間の円ドルレートの変動は2.77円の円安・ドル高であったことが、グラフから読み取れます。
2024年2月5日(月)・6日(火)・8日(木)・9日(金)が前週末比並びに前日比各1.85、0.04、0.89、0.68円の円安・ドル高となった一方で、7日(水)が前日比0.69円の円高・ドル安となったことが、グラフから読み取れます。その結果、2024年先月末1月31日(水)終値147.65円と比べると、2024年2月第2週最終取引日2月9日(金)は1.74円の円安・ドル高となりました。
途中の行き過ぎた円高・ドル安や円安・ドル高に戻った日を以下のように除外して、傾向線を求めます。2024年2月2日(金)146.62円から2月9日(金)149.39円までの変動範囲の中で、2024年2月2日(金)146.62円より円安・ドル高となる最初の取引日、次にその日より円安・ドル高となる日、2月9日(金)148.39円までそのような手順を繰り返すと、2024年2月5日(月)148.47円、6日(火)148.51円、8日(木)148.71円が該当することを、グラフより読み取れます。したがって、2024年2月2日(金)146.62円、5日(月) 148.47円、6日(火)148.51円、8日(木)148.71円と2024年2月第2週最終取引日である9日(金)149.39円を結ぶ薄茶色のグラフが傾向線となります。
2024年2月第1週最終取引日2月2日(金)146.62円から、いわば一直線で2月第2週最終取引日である2月9日(金)に2.77円の円安・ドル高となったと想定したのが、傾向線です。
2024年2月第2週の円ドルレートは、週明け後大幅と軽微な2日間連続の円安・ドル高でスタート、その後円高・ドル安へ転換、しかし再び取引最終日も含め2日間連続で円安・ドル高へ復帰、最終的にはスタート時点の円ドルレートを2.77円下回る大幅な円安・ドル高で終わる、米早期利下げ観測の後退や日本株高などを通じて円安・ドル高が圧倒する循環的変動となりました。このような傾向線の背後にある2.77円の円安・ドル高の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づき検討すると、以下のようになります。
第1は、1月米雇用統計でどちらも市場予想を上回る非農業部門雇用者数や平均時給の伸びに基づく、米労働市場の需給逼迫持続の見方に基づく米早期利下げ観測の後退により米長期金利が上昇し、日米金利差拡大を意識した円売り・ドル買いが出たことです。
第2は、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の「2%目標へ向けたインフレ率の持続的低下を示すさらなる証拠を確認したい」などの発言も、早期利下げに慎重な姿勢と受け止められ円相場を下押ししたことです。
第3は、国内輸入企業による円売り・ドル買い観測も、円相場の重荷だったことです。
第4は、クグラーFRB理事の「経済データを注意深く見守り今後の進展確認を行う」や、バーキンリッチモンド連銀総裁の「利下げに関して忍耐強くなるのが合理的だ」との発言はいずれも早期利下げに慎重な姿勢と受け止められて米長期金利が上昇し、日米金利差拡大を意識した円売り・ドル買いが出たことです。
第5は、市場予想を上回る2023年10〜12月期決算での1株利益がウォルト・ディズニー株の値上がりをもたらし米株高につながったのを受け、日経平均株価が2%超上昇するなど投資家心理が強気に傾いたのも、低リスク通貨の円売りを促したことです。
第6は、内田真一日銀副総裁は「マイナス金利解除後の利上げ加速化パスは考えにくく緩和的な金融環境は持続する」との考えを示し、日銀の金融緩和姿勢長期化の観測に基づき国内長期金利は低下し、日米金利差が開いた状況持続の見方が円安・ドル高を後押ししたことです。
第7は、海外勢による日本株投資の為替変動リスク回避目的の円売り観測も、追い風となったことです。
第8は、市場予想を下回った米週間新規失業保険申請件数が労働需給逼迫と受け止められ、FRB利下げ観測の後退による米長期金利の上昇を通じて、日米金利差拡大を見込む円売り・ドル買いが優勢だったことです。