今回のLink MEは特別編として経済コラム「レッツ経済学 外国為替市場と為替レートの決定(3)」を掲載します。
「第289回 経済コラム(254) レッツ経済学 外国為替市場と為替レートの決定(2)」では、利子裁定式の考え方を解説しました。日本利子率、米国利子率、将来の予想円ドルレートの値が決まると、現在の円ドルレートは将来の日米元利合計を等しくさせる値に決まるという考え方です。
利子裁定式の考え方に従うと、現時点で日本利子率と米国利子率が異なれば、両国の利子率格差から生まれる有利性は、将来の円ドルレート予想変化率によって相殺されます。将来の予想円ドルレートの値が前もって与えられていれば、現時点の円ドルレートの値によって将来の円ドルレート予想変化率は決まります。利子裁定式の考え方を式で表すと、以下のようになります。
日利子率-米利子率=将来円ドルレート予想変化率 (1)
米国利子率を左辺へ移項すると、以下の式が得られます。
日利子率=米利子率+将来の円ドルレート予想変化率 (2)
将来の円ドルレート予想変化率を式で表し、変形すると以下の式が得られます。
変形して得られた将来の円ドルレート予想変化率(4)式を、米国利子率を左辺へ移項した利子裁定式(2)式へ代入すると、以下の(5)式が得られます。
将来の予想円ドルレート、日本利子率の値が与えられ、日本利子率は米国利子率よりも低い状況を想定します。
日本利子率<米国利子率 ⇒ 将来の円ドルレート予想変化率の値はマイナス ⇒将来の予想円ドルレート<現在の円ドルレート⇒ 将来の予想円ドルレートは現在の円ドルレートよりも円高・ドル安
日本利子率が米国利子率よりも低いことは、(1) 式より将来の円ドルレート予想変化率の値はマイナスとなります。将来の円ドルレート予想変化率の値はマイナスということは、(3)式より将来の予想円ドルレートは現在の円ドルレートよりも小さな値をとることを意味します。いいかえると将来の予想円ドルレートは現在の円ドルレートよりも円高・ドル安となります。
(3)式で表現された利子裁定式を用いて、米国利子率引き上げが現在の円ドルレートへ及ぼす効果を考えてみます。
日本利子率<米国利子率+将来の円ドルレート予想変化率 ⇒ 将来の円ドルレート予想変化率のマイナスの値が小さくなる ⇒ 将来の予想円ドルレートと現在の円ドルレートの差が小さくなる ⇒ 現在の円ドルレートの値が大きくなる=現在の円ドルレートが円安ドル高になる
米国利子率が引き上げられる状況で、(1)式を再び成立させるためには、将来の円ドルレート予想変化率のマイナスの値が小さくなって、米国資産が日本資産に比べて有利となることをくつがえす必要があります。将来の円ドルレート予想変化率の値が小さくなるためには、(4)式より現在の円ドルレートが大きくならなければなりません。すなわち現時点で円安・ドル高が生じることになります。
米国利子率引き上げという原因は、現在の円ドルレートの円安・ドル高を引き起こすという結果をもたらします。現時点での円安・ドル高は円をドルに交換して、米国資産を購入するメリットを減少させます。


