今回のLink MEは特別編として経済コラム「為替レート変動と原因 [153]」に引き続き、月末値変化で見た2021年1月の円ドルレート変動の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事と「為替レート決定の仕組み ①~③」で説明した利子(金利)裁定式、に基づき解説します。
「為替レート変動と原因 [153]で観察したように、2020年12月30日(水)103.32円から出発し、5つの完全小循環と1つの完全中循環、傾向線に沿った2つの動きを経て、2021年1月29日(金)に1.22円 円安・ドル高104.54円で2021年1月最後の取引を終えたのが、2021年1月の円ドルレート変動でした。
日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事では、上記の傾向線から外れた局面の変動は、円高・ドル安局面では新型コロナウイルス感染拡大による政府の緊急事態宣言再発令検討の着手、米連邦議会上院の決選投票を巡る思惑絡みによる流動性確保目的のドル需要減少、パウエルFRB議長による金融緩和長期化の示唆、米雇用指標の悪化、次期米財務長官指名イエレン氏の為替レートは市場が決めるものだ」発言を受けた財政拡張と金融緩和の長期化への思惑、バイデン氏大統領就任式前の円持ち高調整、短期的な日経平均過熱感による利益確定売りに基づく円キャリートレードの解消、バイデン新政権による大規模財政出動への期待を通じた対資源国通貨ドル売りの対円波及、FOMCでの金融緩和長期化示唆の思惑などが主たる原因であったことが指摘されています。
他方、円高・ドル安の修正局面では国内輸入企業の先行き円安・ドル高予想、バイデン政権の大規模財政支出踏み出しによる円滑な米国景気回復進行の見方、バイデン次期大統領の追加経済対策案発表出尽くし感に伴う米株利益確定売り・市場予想を下回った2020年12月米小売売上高・米国次期財務長官指名イエレン氏の大規模経済対策に前向き姿勢報道に基づく円キャリートレードの開始などが主たる原因であったことが指摘されています。
「為替レート決定の仕組み ①~③」で説明した、利子裁定式i-i*=(πe-π)/πを予想為替レート(πe)について解いたπe=π(1+i-i*)を使って、2020年12月30日(水)と2021年1月29日(金)の予想為替レートを求めてみます。利子率(金利)データは日米10年物国債利子率を使用します(時差を考慮し米利子率は前日データ)。
2020年12月30日(水)の円ドルレート終値103. 32円、円利子率0.020%、米利子率0.942%を上式に当てはめると、予想為替レートは102.37円となります。同様に2021年1月29日(金)の円ドルレート終値104. 54円、円利子率0.055%、米利子率1.048%を上式に当てはめると、予想為替レートは103.50円となります。2020年12月30日(水)から2021年1月29日(金)にかけての予想為替レート変化1.13円の円安・ドル高、他方両日の日米利子率格差はそれぞれ、-0. 922%、-0. 993%で日米利子率格差変化(Δ(i-i*) )0.071%拡大となります。
これらの値を以下の計算式に当てはめると、予想為替レートの変化(Δπe) 1.13円の円安・ドル高が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円安・ドル高効果は1.14円、他方日米利子率格差変化(Δ(i-i*)0.071%拡大が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円安・ドル高効果は0.07円、1.22円(現実為替レートの変化) ≒ 1.14円 + 0.07円が得られます。円ドルレート予想と日米利子率格差の拡大は、ともに円安・ドル高へ作用しています。日米利子率格差拡大の原因は、個人投資家の過度な投機的売買を制限する動きの広がりを受け米株式相場の反発でリスク回避の動きが和らぎ相対的に安全資産とされる米国債には売りが出たことです。
[153]のグラフより、2020年12月30日(月)103.32円~2021年1月7日(木) 103.36円、12日(火) 104.15円~28日(木) 104.30円の各期間で、循環的変動も最終的に円安・ドル高トレンドへ収束する形になっていることが読み取れます。したがって、1月7日(木) 103.36円、8日(金)103.97円、12日(火) 104.15円、28日(木)104.30円、29日(金) 104.54円によって、傾向線の背後にある原因が説明できます。
日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事に基づくと、予想為替レートの変化(Δπe) 1.13円の円安・ドル高が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円安・ドル高効果1.14円の原因は、バイデン政権の大規模財政支出踏み出しによる円滑な米国景気回復進行の見方、米ジョージア州上院決選投票の通過・トランプ米大統領の政権移行確定方針・大型の財政出動も含む経済対策による景気の先行きに楽観的な見方に基づく円キャリートレードの開始、国内輸入企業の先行き円安・ドル高予想、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)急落による半導体関連株売り・米新興ネット証券のロビンフッドの急騰銘柄への取引制限緩和発表による個人投資家の投機的売買のボラティリティー(変動率)上昇に対する警戒感・米株価指数先物下落に基づく流動性確保目的のドル需要増加、となります。
