目次10、「旦那の上司に○かれる妻」 | カメラマン 兼 作家の備忘録

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あの頃まだJekyllから時々Hydeだった、だが今ではもうすっかりハイド時々ジキルなのだ。

 

 旦那を亡くして、ひとり不安に苛まれていた頃、旦那の元上司がいろいろ助けてくれたと。

その人は旦那の直属の元上司の部長さんで結婚の仲人でもあると。

 

旦那が亡くなった頃は三十二歳くらい、女の盛りも盛り、欲求が溜まらないわけがなく

ある日、とうとう我慢できず、その上司にお願いした  「私を○いてほしい」

それを聞いた上司は彼女の苦悩と心情を察して

 

「わかった、でもあくまでも貴女のこころとカラダのバランスを保つためだよ・・・・

       その代わり貴女にいい人が出来るまでだよ」

 

その後、新しい彼氏が出来たという話を聞いて、「おいおい、それって彼氏って言えるのか~」

 

SNSで知り合った、札幌に住む画家だと、ある日、自分の理想像を胸に抱え札幌まで会いに行き、

泊まったホテルのラウンジで初めて会ったと。

 

「どんな男だった?」と訊くと。

「歳は六十歳はとうに過ぎていて白髪頭の、どっちかと言うとおじいちゃんだった」と。

 

俺は「え~~」と言った。

ギャップというよりジェネレーションギャップに近い。

理想とは乖離し過ぎて、普通なら自分のアホさ加減に自己嫌悪になり、せいぜいお茶して終わり

とか無かったことにするだろう、現実ってそんなもんだよ、と思った。

 

だが、まてよ「それがなんで彼氏なんだ?」と訊くと、信じられないことを言った。

 

「ラウンジで少し話をしてから自分の部屋に行き、ベッドは子供が寝ているので床に掛け布団を

敷いてその上で二人○○になって、愛し合った」と。

 

俺は「え~~」を飛び越え、「ギョエ~~」と叫んだ。

 

 

 俺が見たこともない旦那の上司は仲人となり、部下である二人の見届け人となった。

旦那の葬儀で見た若き未亡人から醸し出されるエロチシズム。

その喪服から滴る露を啜ってみたいと願う上司。

 

男同士、その上下関係の友情から友(YOU)が亡くなり情が残る。

その情がやがて、すがる愛情に変わるその時を、じっと息を殺して待つ。

 

そして「○いて」と言われた時、「こころとからだのバランスを保つためだよ」と

体裁を繕い、自分の下心を伏せる。

 

そんな偽善者面した元上司や、終活をそろそろ準備しなければという初老の男が抱いた

「三十代ピチピチ女を○けるかも」という微かな期待。

そのためには「女房とうまくいっていない」と同情心を仰ぐ。

 

この女を○きながら、こう思ったことだろう。

 

こんないい女を○けるとは、きっとこれが俺の人生最後の最後

最高にいい思いなんだろう・・・・・と。

 

 

 

 

待望の第2弾「続・Hyde時々Jekyll」9月1日文芸社より発売

 

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