2022年の共テ古文の全訳です | 吉野敬介オフィシャルブログ「俺にまかせろ!」Powered by Ameba

2022年の共テ古文の全訳です

 後深草院もご自室に戻って、少しお休みなさっているけれども、お眠りになることがおできにならない。さきほどの斎宮のお姿が心にかかるように思われなさるのがたいそうどうしよもない。「わざわざ(恋する気持ちを)申し上げるようなことも、人聞きがあまり良くないだろう。どうしようか、いやもうどうしようもない」と思い乱れなさる。(後深草院と斎宮は)異母兄弟だとはいうけれども(→斎宮は妹だとはといっても)、長い年月離れて(→別のところで)成長なさっているので、他人行儀になりなさっているまま、遠慮した方がよいというお気持ちも薄かったのだろうか、やはりひたすらにスッキリしないまま終わってしまうようなのは、満足が行かず残念なことだとお思いになる。よくないお心であるよ。

 誰それの大納言(=二条)という、後深草院がお側でお使いになる人で、例の斎宮にもふさわしい縁があって、親しく参上なさる人(→顔を出し申し上げている人)をお呼び寄せになって、「馴れ馴れしい関係になろうとまでは思っていない。ただもう少し気楽に話せる距離で、私が思う気持ちを少しだけでも申し上げたいと(思うんだよ)。このような好機もたいそう難しいだろう(→そう滅多にはないだろう)」と切実に誠実ぶっておしゃるので、どのように騙したのだろうか、夢とも現実ともなく近づき申し上げなさったので、斎宮はとてもつらいとお思いになるけれども、弱々しく消え思い乱れまどうようなことはしなさらない。

 

 

 斎宮は二十歳を超えていらっしゃる。成熟なされているご様子は、伊勢の神様も名残惜しく慕いなさった(→斎宮を退任後も帰京せずにしばらく伊勢にとどまることになった)のももっともなことで、花と言うなら、桜に例えても、傍目にはどうだろうか、いや、どうにも違わないと、桜に霞がかかるように、お顔を袖で隠した絶え間もどうしようかしらと、きっと(どの男の人も斎宮のお顔をみたいと)思うに違いないご様子であるので、まして好色な後深草院のお心の中は、早くもどのような恋煩いの種になっているであろうかと、他人(=私、つまり後深草院に親しく使える二条)としても、お気の毒に思われなさいました(→お見受けしました)

 後深草院と斎宮は親しくお話しなさって、伊勢神宮に奉仕していた頃の思い出話などを、とぎれとぎれに申し上げなさって、

 (後深草院は斎院に)「今夜はすっかり更けてしまいました。ゆっくりと、明日は嵐山の落葉した木々の梢などをご覧になって(から)、お帰りください」などと申し上げなさって、ご自分のお部屋にお入りになって、早くも(私に)

 「どうしたらいいだろうか。どうしたらいいだろうか」

とおっしゃる。やっぱり私の思っていた通りだよと、おかしく見ていると、

 「幼いときから私のお側に仕えてきたので(→仕えてきたのだから)、この私の恋心をあの斎宮にお伝え申して叶えてくれたのなら、(お前が私に対して)誠実に愛情を持っていると思おう」

などとご命令があって(→あったので)、すぐに私は後深草院の使いとして、斎宮のもとに参上する。ただ並一通りのようにして(→ただありふれた挨拶で)、「お目にかかれて、嬉しく存じます。(帰京の際の)旅寝は寒々としたものでございましたでしょうか」などと言って、密かに後深草院の手紙がある。氷襲の薄様だっただろうか、

 

 あなたはご存知ではないでしょうね。たった今会ったあなたの面影がすぐに私の心にかかったのだなあ、とは

 

夜が更けたので、斎宮の御前いる女房たちも皆、ものに寄りかかって横になっている。斎宮ご本人も小さな几帳を引き寄せて、お休みになっておられるのだった。私が斎宮の近くに参上して、事の有様を申し上げると、斎宮はお顔赤らめて、あまり何もおっしゃらない。後深草院からの手紙を見ることも特にないままに、置いておしまいになった。

 「後深草院になんとご返事を申し上げましょうか」

と申し上げると

 「思いがけないお言葉は、ご返事をなんと申し上げたらよいか、言えることもなくて」

とだけで、また寝ておしまいになったのも不愉快なので、後深草院のところに帰参して、この趣旨を申し上げる。

 「とにかく、斎院が寝ていらっしゃるようなところに私を連れて行け、連れて行け」

と責めてきなさるのもめんどくさいので、忍び込むようにお供に参るようなことは簡単な(ことなので)、案内をして斎院のところに参る。甘のお着物などは大げさなので、後深草院は大口袴だけで、人目を避けながらお入りになる。

 まず私が先に参上して、障子をそっと開けると、斎宮はさきほどのままでお休みになっている。斎宮にお仕えしている女房たちも寝入ってしまったのだろうか、音を立てる人もなく、後深草院がお体を小さく縮めて這ってお入りになった後、室内ではどのようなことがおありだったのであろうか。

 

 

今日は今から六本木で吉村崇さん司会の「OFFRECO」という番組の収録です。詳しくはまた。もう時間がない。急いで髪をセットしないと。ちょっと急いで訳して見ました。参考にしてください。見直す時間がなかったので、誤字、脱字は勘弁してください。