前回(抄読会~令和4年9月~)に引き続き

プラセボについての論文ですが

今回は少々特殊な論文でした。

 

 

タイトルは

Placebo studies and ritual theory: a comparative analysis of Navajo, acupuncture and biomedical healing

-プラシーボ研究と儀式理論:ナバホ族の比較分析。鍼灸とバイオメディカルヒーリング- です。

 

 

プラセボ研究で有名なKaptchuk先生の論文で

“宗教儀式による治療”と”鍼灸治療”と”投薬治療”

それぞれのプラシーボ効果について

文献を基に比較した研究です。

 

本論文中では“宗教儀式による治療”が

人体に及ぼす影響(生物医学的な影響)については

あまり述べられていなかったのですが

鍼灸治療や投薬治療については

いくつかの例を挙げて述べられていました。

 

 

 

興味深かったのは

4人の鍼灸師が同じ疾患に対して同じ手順の治療を

忠実におこなった場合でも

治療効果にばらつきがあったことです。

鍼灸師同士の技術差も

もちろんあると思いますが

治療効果には治療内容だけでなく

施術する環境や施術者の雰囲気、

誰が治療するか(権威性)など

複合的な要素が関係していることが示唆される記述でした。

 

また、投薬治療でも

「疼痛コントロールのために鎮痛薬を隠れて注入したが、

これらの強力な鎮痛薬は患者の目の届くところで

オープンに提供された場合と比べて効果が低い」

との記述もありました。

鎮痛薬が投与されているという認識を持つことが

治療効果のひとつになり得るのではないかと考えられます。

 

 

鍼灸治療も投薬治療も全ての症例において

このようなことが起こっているわけではないと思いますが、

”治療を受けている”という事実や

治療の内容・方向性を患者さんご自身が認識すること、

安心して治療を受けられる環境を用意することは

治療効果をより高めることにつながるのではないかと

本論文を通じて感じた事でした。

 

 

普段から

どういう目的で

どういう治療をおこなうか

説明をするよう心掛けておりますが

こうした説明自体も治療の一環になり得るのだと

改めて思いました。