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ある日の事、いつものように物件を探していると、おあつらえの平屋一戸建てをネットで偶然見つけたのでさっそく物件を調査しに行った。
株式会社ルーエンハイム(仮名) 事務所にて
嘉 「こんにちはー、昨日お電話した嘉です」
担当安田さん(仮名)「どうも、お待ちしておりました。早速ですが物件まで行きましょう。」
そして一行は物件まで車で向かった。
安「ここです」
嘉 「うわ、古!」
築30年は超えているいかにも古そうな平屋一戸建だった。
安 「どうぞおあがりください」
安田さんが玄関のカギを開けてくれた。
嘉 「お邪魔します・・・」
嘉 「お」
嘉 「中は結構きれいですね」
安田 「はい、建物は相当古いんですが、中は結構丁寧に使われていたみたいです。」
嘉 「空き家期間は5年くらいでしたっけ?」
安 「はい、だいたいそのくらいです。」
嘉 「ええと、和室6畳間に、リビング4.5畳に、キッチン4.5畳に、寝室6畳に・・・アレ、けっこう広いな」
安 「このキッチンとリビングはリフォーム済みでして、全部フローリングに変えてあります。」
嘉「言われてみれば、なんかここだけ違和感ありますね、なんかここだけ新しいっていうか・・・」
安「ガスも都市ガスで、上下水道も管通ってます。(浄化槽じゃないです)」
嘉 「古い物件なのになんかそういうところしっかりしてますね」
*地方の中古一戸建ての設備には、「プロパンガス」「浄化槽」みたいな組み合わせも珍しくはないのです。
嘉 「ん」
嘉 「なんか賑やかだなと思ったら、真横が小学校なんですね」
安 「そうなんですよ。学校もすぐ近くにもう一つありますし、この物件の通路入口は新築の家が次々に建っていってます。
結構な人気エリアなんですよ。」
嘉 「確かに、なんか周りの雰囲気はいい感じですね」
(なんとなく僕の直観が働いた気がしました。前回の物件(通称山田ハウス)とは違う安らぎの感じがしました。)
(カマジイ
が住んでいた地域の異様な雰囲気とは違う空気感。)
安 「駅も歩いて13分くらいです。あともう1つのローカル線の駅は歩いて7分です。」
嘉 「ええ、地図で調べました。立地はなんとなく良さそうですね。」
嘉 「だいたいわかりました、とりあえず今日はこれで帰ります。もし買いたくなりましたら電話します。」
すぐに答えを出さず、とりあえずもう一度調べたり、ゆっくり考えてみようと思い、その日は安田さんと別れた。
そして1週間後
(電話)トゥルルルr
安 「はい、株式会社ルーエンハイムの安田です。」
嘉「安田さん、こんにちは、嘉です。いろいろ考えたのですが、あの物件買ってみようかなと思います。」
安 「嘉さん・・・なんと言いますか、非常に残念なのですが、実は数日前にあの物件を買いたいという方が表れて、既に買付申込書を頂いてしまったのですよ。」
嘉 「オーノォー!」(;´・ω・)ウ・・・
嘉 「そうだったんですか」
安 「すみませんです・・・はい。」
前回の物件(通称山田ハウス)の時は焦ってすぐに買付申込書を出してしまったから、今回は落ち着いて判断を下そうと思っていたのですが、ちょっと落ち着きすぎてしまいました。
そして3か月後
僕は株式会社ルーエンハイムの物件のことなどすっかり忘れて、相変わらず他のエリアで物件探しをしていた。
(電話) トゥルルル
嘉 「はい」
安 「どうもご無沙汰しております、ルーエンハイムの安田です。」
嘉 「安田さん、どうもこんにちは、どうしたんです?」
安 「それが、実は、この前見て頂いた物件なのですが、あの後取引がうまく進まず、結局今もまだ残っているのです。」
「もし嘉さんがまだ興味があればと思いましてお電話差し上げた次第です。」
嘉 「ああ、そうだったんですね。 前の人、買わなかったんですか?」
安 「いいえ、売主様が前の買主候補さんが提示した買付金額を見て、納得されなかったんですよ。」
嘉 「なるほど。ちなみにおいくらくらいです?」
安「はい、あ、いいえ、そこは教えられないのですが・・・。」
嘉 「ですよね」
嘉 「わかりました、では買いましょう、僕が。」
安 「そうですか、それは良かったです。あの後、何件か買付があったのですが、売主様がすべて断ってしまったのですよ。」
嘉 「売る気ないんじゃないですか?」
安 「ええ、我々も困ってしまいまして・・・」
嘉 「なるほど。」
(僕は考えました。 今まで売主様が断ったということは、これまでに相当金額の低いオファーが連チャンして続いていた可能性があると。つまりそのオファーの額より少しだけ多めの金額を提示すれば、可能性があるかもしれない。)
(正直、買えても買えなくてもどっちでもいいや、という態度で臨もうとしました。)
(ロバートキヨサキの言葉を思い出して。 そう、「物件そのものに恋をしてはいけない」)
嘉 「55万」
嘉 「これでなんとか宜しくお願い致します」
安 「・・・」
安 「わかりました、我々も同じ物件が我が社のホームページ上に何か月も載ることを嫌いますので、これでなんとか交渉させて頂きます。」
(よし!!OKが出たということは、前回の連チャンオファーより僕が提示した金額が高い、ということになる。)
(これで変えたらラッキー。買えなかったらさっさと次の取引へ。)
そして僕は安田さんと電話を切って、1週間くらい待ちました。
1週間後
(電話) トゥルルル
嘉 「はい」
安 「どうもご無沙汰しております、ルーエンハイムの安田です。」
嘉 「安田さん、どうもこんにちは、どうしたんです?」
安 「やりましたよ、嘉さんのオファーが通りました! 売主様がとうとう折れました!」
嘉 「ええ!? そうなんですか!? それは予想外・・・いや、良かったです。」
安 「私も売主様へ説得しました。これ以上の値段にはなりませんよ、って。」
嘉 「そうだったんですか!?それはありがとうございます!」
ということで何となくオファーした物件が買えてしまって、なんかあっけなかった、というかあっさり終わった感じでした。
僕はラッキーです。
なぜなら、僕の前に何人かの人々が買付のオファーをだし、見事玉砕してくれたからです。
何人もの人々のオファーの結果、偶然、相場が下がってしまったのです。
そしてそれを後押しするように、ルーエンハイムの安田さんがその下がった相場を支持してくれました。
(「これ以上は値が上がりませんよ」という具合に)
売主様にとっては、「ワシの物件はこの程度の価値しかないのかい!?」と思われたかもしれません。
実際の評価額は何倍も高かったのに、買付のオファーの値がその何分の1。
どう考えてもおかしいのですが、売主様には下がった相場を現実のものとして受け止めてしまったのです。
これはある意味、「偶然発生した見せ玉
」です。
もちろん、相場捜査を意図的に行った人間は誰一人おらず、偶然が重なって相場が下がってしまった、ということになるのですが
このようなことがあるのだな、とつくづく不動産の面白さを実感した嘉でした。
ただ、僕としては、それほど心より欲しかった物件ではなかったので、たぶんこの家を直したら、今度はもっと自分にとっての「良い家」を探しにまた物件探しの旅に出るのだと思います。
それまではしばし、休憩。
家さがし物語、 さらに続く